artscapeレビュー
建築以前・建築以後 展
2009年09月15日号
会期:2009/08/01~2009/08/29
小山登美夫ギャラリー 7F[東京都]
清澄白河の巨大倉庫の中にいくつかのギャラリーが移転した。そのうちのひとつ小山登美夫ギャラリーで開かれた「建築以前・建築以後 展」では、菊竹清訓、伊東豊雄、妹島和世、西沢立衛、SANAAによる、過去の未完プロジェクトや、現在進行中のプロジェクトなどが紹介された。菊竹の一連の「海上都市プロジェクト」、伊東のオスロの「ダイクマン中央図書館」コンペ案、妹島の「犬島アートプロジェクト」、西沢の「ガーデンアンドハウス」と「t-project」、そしてSANAA(妹島和世+西沢立衛)の「スイス連邦工科大学ローザンヌ校ロレックス・ラーニング・センター」がそれぞれ展示されていた。作品の共通点は、タイトルや鈴木布美子によるキュレーションの意図が示すように、すべて〈未だ建築にならざるもの〉である点であり、本展覧会ではその表象の可能性の多様性が追求されたという。しかしそれと同時に、またそれ以上に、この展覧会から感じたのは、日本建築における「系譜」の強力さである。菊竹、伊東、妹島、西沢(立衛)という流れは、ご存知のように連綿と続く師匠─弟子関係でもある。もちろん、それぞれの弟子はひとりではないのだから、ほかにも「系譜」は描けるはずであるが、この流れは建築界の誰もが「直系」であると認めよう。そう思ってみていくと、菊竹の海上都市プロジェクトにおけるゆるやかなカーブが、西沢の描く曲線にまで、つまり1950年代からゼロ年代まで半世紀をかけて、進化しながら受け継がれているかのようにも見えてくる。ひとつの流れに属する複数の世代の建築家に、それぞれの共通点と変化を見ることができ、興味深い展覧会だった。なお隣の小部屋で、それぞれのプロジェクトに関するいくつかの映像を見ることができ、特に竣工当時のスカイハウスの映像を見ることができたのは貴重だった。
2009/08/28(金)(松田達)