2019年09月15日号
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artscapeレビュー

2012年05月15日号のレビュー/プレビュー

大小島真木 個展「獣たちの声は精霊の声となり、カヌムンは雨を降らし、人びとは土地を耕した。」

会期:2012/04/07~2012/04/29

island MEDIUM[東京都]

アンリ・ルソーが描いたような南国の濃密な空気が漂うDMに吸い寄せられて見に行ったら、ギャラリーは3331内の向かいの小さな部屋に引っ越していた。その小さな展示室に作品がところ狭しと飾ってあり、濃密感は十分。描かれているのは、タイトルにも謳われているとおり、森のなかに精霊たちがウヨウヨいて、人間と獣とのあいだに境界線がなく、ということは人間がまだ自然のなかにすっぽり包まれていたプリミティブな世界らしい。そんな世界が好きだから濃密な絵になったのか、濃密な絵を描いていたからそんな世界に入り込んだのか。ともあれ絵の内容と形式は一致している。

2012/04/27(金)(村田真)

霜田誠二 展「玄米麹で」

会期:2012/04/23~2012/04/28

ステップスギャラリー 銀座[東京都]

世界を股にかける(どっちかというと情勢不安定なアジア、東欧圏に需要が高い)パフォーマンス・アーティスト霜田誠二の個展。彼はパフォーマンスだけでなく、詩も書くし絵も描く。子もつくるし、ミソもつくる。今回はちゃんとキャンヴァスにアクリルで描いた絵と、額縁入りの手描き「突撃新聞」に、その場でつくる玄米麹や手描きTシャツなども販売。このアクリル画、なにか匂うと思ったら一部に玄米麹を塗り込めているのだ。タイトルは「麹中」か「酵母展」にすればよかったかも。ちなみにこの画廊は銀座4丁目のギャラリー58が入ってるビルの上階に位置する。さぞかし家賃も高いだろうと思いきや、オーナーでアーティストの吉岡まさみ氏によれば、エレベーターのない5階なので周囲に比べればかなり安いという。まあエレベーターのないビルの5階だと、巨大な鉄の彫刻展は無理だろうな。

2012/04/27(金)(村田真)

野村恵子「SOUL BLUE」

会期:2012/04/23~2012/04/29

Place M[東京都]

野村恵子の前作は、2009年にエモン・フォトギャラリーで展示された「RED WATER」。赤から青へと基調色が変化したわけだが、血を騒がせるような、光と闇の強烈なコントラストに彩られた風景の合間に、女性のポートレートやヌードを配する構成そのものはそれほど変わっていない。だが、東京の自宅のマンションから定点観測的に撮影し続けた風景の連作(ここでも基調となる色は青)などを見ると、かつての心を浮き立たせるような強烈なビートはやや影を潜め、時の移ろいを静かに見つめるような沈潜した気分が迫り出していることがわかる。20歳代でデビューした野村も、40歳代になり、両親を相次いで亡くしたこともあって、写真家としての現実世界への向き合い方が少しずつ変わり始めているということだろう。
こうなると、そろそろ彼女の現在の到達点をくっきりと示すような展覧会や写真集がほしくなってくる。そう思っていたら、どうやら野村自身も同じことを考えていたようだ。今回の展示には間に合わなかったのだが、秋にこの「SOUL BLUE」のシリーズを、赤々舎からハードカバーの写真集として刊行する予定があるという。野村本人は新作だけでまとめたいという意向のようだが、僕はいっそのことデビュー作の『DEEP SOUTH』(リトルモア、1999)以来の代表作を、総ざらいするくらいの写真集にしてほしいと思う。ひとりの女性写真家の成長の過程を見るということだけではなく、1970年代生まれ野村の世代が築き上げてきた写真の底力を、しっかりと見せつけてほしいのだ。

2012/04/27(金)(飯沢耕太郎)

『JAGDA REPORT』 Vol.189「東日本大震災記録集」

発行日:2012年3月5日
発行者:社団法人日本グラフィックデザイナー協会
サイズ:B5判、96頁(岩手編)、84頁(宮城編)、88頁(福島編)、三分冊、函入り

アートディレクター=畠山敏
ケース装丁=畠山敏
ベースデザイン=鈴木文土
編集協力=永井一史(JAGDA広報部会長)
制作管理=工藤千佳、朴善希(JAGDA事務局)
印刷協力=大日本印刷株式会社、凸版印刷株式会社、株式会社北斗社
用紙協力=株式会社竹尾

社団法人日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)が発行する会報誌『JAGDA Report』の2011年度版(第189号)。被災地の復興支援として、岩手・宮城・福島の会員へ会報誌の編集・制作業務を委託し、グラフィックデザイナー自身の視点による震災記念集として本誌を発行。

──日常から非日常への予兆なき変動によりすべてが停滞した地震発生時、会員たちは何をしていて、どのような行動をとっていたのか。また、震災から1年が経過した今日における状況の変化や心境は如何なるものか。そして、この先の未来に何を望み、どのようなことに取り組んでいこうとしているのか。(本誌より引用)

各編の会員レポートでは、岩手・宮城・福島の各県の会員が「3月11日」「現在」「未来」についての記憶と想いを綴る。JAGDAは、全国に約2,800名を超えるメンバーを擁する、アジア最大級のグラフィックデザイナー団体。

[岩手編・目次]
succession──岩手・震災の記憶
会員レポート(槻舘常敏、及川利春、馬淵ひろみ、村上由美子、宇夫方康夫、斎藤喜郎、浅沼謙多郎、佐々木崇、佐々木暁光、阿部伸樹、小笠原一志、金谷克己、木村敦子、赤坂環、小原明男、内村豊、竹村育貴、服部尚樹)
3.11の後、JAGDA岩手として取り組んだ活動
おわりに(浅沼謙多郎)

[宮城編・目次]
被災地レポート(気仙沼市:吉田和加さん、石巻市:阿部正樹さん、七ヶ浜町:伊藤弘江さん・金丸博和さん、多賀城市:鈴木崇寛さん、仙台市:板橋祐子さん、亘理町:浅野由美さん、山元町:石川智士さん、取材後記[阿部拓也、高橋雄一郎])
会員レポート(畠山敏、阿部拓也、安倍幸一、永澤正直、宮野一男、五十嵐冬樹、草野裕樹、鈴木文土、鈴木リョウイチ、高橋雄一郎、原田純一、細野講治)
視察レポート(勝井三雄、永井一史、大迫修三)
手書き新聞 米で永久保存(畠山敏)

[福島編・目次]
Data of FUKUSHIMA
会員レポート(ararky、影山敦、小針一夫、後藤仁、さとうはじめ、関根清、土田哲、奈良博四、星昌宏、本田陽一、山西一紀)
福島の本音──福島県民に、今の気持ちを語ってもらいました。

詳細=http://www.jagda.org/archive/pub/jagdareport/189.php

2012/05/15(火)(artscape編集部)

プレビュー:KAVC ART LINK シリーズvol.13「ひとりDrawing Exhibition 築山有城 展」

会期:2012/06/16~2012/07/01

神戸アートビレッジセンター KAVCギャラリー[兵庫県]

神戸のCAP STUDIO Y3では年に一度、彫刻家や写真家、映像作家などによるドローイング展「Drawing Exhibition」が行なわれている。これは、普段その制作過程において「描く」という行為を行なっていない作家たちが、「描く」ことをとおして作品との関係性や距離感を浮かび上がらせようという試み。本展では「Drawing Exhibition」に過去2回参加している神戸在住の彫刻家、築山有城が近年描いたドローイングのほぼすべてを展示する。立体作品に至るまでの制作過程や作家自身の思いがいろいろとうかがえそうだ。


《The Core -paper・ink-》計186点 2011年
Photo by OHNISHI Masakazu

2012/05/15(火)(酒井千穂)

2012年05月15日号の
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