artscapeレビュー

2015年07月15日号のレビュー/プレビュー

唐組・第55回公演「透明人間」

花園神社[東京都]

ジャンル:パフォーマンス
水を怖がる犬のイメージが、めくるめく飛翔し、戦時下の中国と行き来しながら、水につかれた幻想の世界に誘う演劇である。赤テントの仮設構築物ゆえに、ラストはパンと舞台がはじけて、屋外の空間と一気につながり、爽快な開放感を味わう。水がテーマであり、実際に大量の水も使うだけに、この演目ならば、雨の日に観劇するのも、悪くないかもしれない。

2015/06/07(日)(五十嵐太郎)

イオンモールKYOTO

[京都府]

京都芸大のレクチャーで立ち寄った桂川駅の真横にも、新しいイオンモールが誕生していたが、前々から気になっていた京都駅すぐそばのイオンモールに足を運んだ。内部の空間はあまりダイナミックではない。が、京都駅ビルに呼応するような屋外の大階段をのぼりきって、振り返ると、目線と合う、ちょうどいい高さで新幹線が走っている。おそらく、ここが見せ場なのだろう。

2015/06/08(月)(五十嵐太郎)

新納翔「築地0景」

会期:2015/06/09~2015/06/27

ふげん社[東京都]

新納翔は1982年、横浜生まれ。早稲田大学中退後、2009~10年にGallery Niepceのメンバーとして、本格的に写真制作活動をスタートさせた。前作の東京・山谷を7年かけて撮影した「Another Side」(2012年にLibro Arteから写真集として刊行)もそうだったのだが、新納は徹底して「内側からの視点」にこだわり続ける写真家だ。今回、東京・築地のギャラリーと書店とカフェが合体した「コミュニケーションギャラリー」ふげん社に展示された新作の「築地0景」でも、警備会社のガードマンとして勤務しながら、メインテーマである築地市場を撮影し続けたのだという。
愚直といえば愚直なドキュメンタリーの手法だが、結果として、とてもユニークな感触を備えた作品として結実したのではないかと思う。市場内のモノたちに寄り添うように撮影することで、普通は「見えない」それらの細部がありありと浮かび上がってくる。それだけでなく、商品や人がめまぐるしく動き回っているはずの高度資本主義経済のメカニズムが、むしろ冷ややかな距離感で捉えられているのが興味深かった。
いうまでもなく、築地市場は2016年中には豊洲に移転することになっている。いま写し出されている眺めは、近い将来には「失われたもの」になるわけだ。新納が、そのことを踏まえて撮影を続けているのは間違いないだろう。ぜひ移転後も撮影を続けて、いったん「0」に戻った市場の景色が、どんなふうに変質しつつ次の時間を刻んでいくのか、過去・現在・未来を包摂したシリーズとして成長していくことを期待したい。

2015/06/09(火)(飯沢耕太郎)

高松次郎──制作の軌跡

会期:2015/04/07~2015/07/05

国立国際美術館[大阪府]

東京の国立近代美術館における高松次郎展は、キュレーターや展示のデザインによる遊び心を感じる内容だった。が、こちらは多くのスケッチ、作品、装幀の仕事などを増やし、時系列にそれぞれのシリーズを並べ、通常は常設に使うフロアも含めて、二層にわたって全館を使う大規模な正統派の回顧展になっていた。彼の作品において、平面上に描かれた空間は、建築的にみても興味深い。

2015/06/09(火)(五十嵐太郎)

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曾健勇「遺失の地」

会期:2015/06/06~2015/07/11

東京画廊[東京都]

中国紙に描いた水墨画が約10点。描かれているのはロバや牛のような動物が多く、描き方はマンガチックというかメルヘンチックだが、動物の体の半分は骨になってるのが尋常ではない。これは童話の世界らしいが、中国社会を暗に批判してるんじゃね? 正面の壁には直接ロバ(馬?)を描き、その上に鳥を描いた板を立てかけている。これもなにか意味がありそうな。

2015/06/10(水)(村田真)

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