artscapeレビュー

2009年06月01日号のレビュー/プレビュー

ノ・ジュン個展

会期:2009/04/27~2009/05/14

ギャラリー風[大阪府]

ドラえもんやサンリオのキャラをダサくした感じのオブジェと写真作品を展示。オブジェは樹脂製と木製があり、樹脂製はツルっと洗練されているのに、木製はゴツゴツした民芸調なのが意外だった。韓国のキャラクター事情は知らないが、この辺りに民族性の違いがでているのだろうか? オリジナル・キャラを世界各地に連れ出して撮影する写真作品も1点出品されていたが、こちらの方が今後展開しやすいように思えた。

2009/04/27(月)(小吹隆文)

6+│アントワープ・ファッション展

会期:2009/04/11~2009/06/28

東京オペラシティアートギャラリー[東京都]

マルタン・マルジェラを筆頭に、アントワープシックスと呼ばれるデザイナーたち、さらにはその後の新世代までを含めて、アントワープ・ファッションの全貌に迫る野心的な企画。図録は写真資料とテキストともにたいへん充実しており、堅実な研究にもとづいていることがよくわかる。とくに言説分析の手法によって、当地の新聞記事からアントワープ・ファッションの変遷を丁寧に浮き彫りにするなど、すぐれた研究内容が反映されていたように思う。けれども、じっさいの展示は、まったくもって落第点。衣服、写真、解説パネル、映像などで構成していたが、空間の容量にたいして作品の点数が圧倒的に乏しいから、貧相で寒々しい展示になってしまっていた。ファッションショウを見せる映像も、壁に埋め込んだモニターを狭い通路にただ並べているだけだから、鑑賞しにくいことこの上ない。展覧会のプロフェッショナルが関与したとは到底思えない、じつに粗悪な展示だった。しかも、一部のデザイナーの日本語表記が一般的に流通している表記と異なっていた点も気になった。すでに「クリス・ヴァン・アッシュ」として定着している表記をわざわざ「クリス・ヴァン・アッス」と書き表わすことの意義がよくわからない。たえず微細な差異を捏造することで正統性を牛耳ろうとするアカデミズムのいちばん悪い部分が露呈してしまっていたのではないか。

2009/04/28(火)(福住廉)

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寺島みどり 見えていた風景「コトバ」

会期:2009/04/28~2009/05/10

neutron-kyoto[京都府]

今年3月から大阪、東京、京都と立て続けに行なわれた寺島の個展。東京展は見られなかったが、大阪展での印象はまだ模索中という感じで、その混沌からどこまで挽回できるかが京都展の焦点だった。結論から言うと、大成功。彼女は自らに課したハードルを確実に乗り越えた。大小さまざまなストロークや点描が重なり合う画面は、たっぷり絵具が乗っているのに抜けが良く、ギトギトした厭らしさも感じさせない。彼女の身体感覚に合うスケールと、絶妙な余白使いが奏功しているのだろう。ギリギリのバランスで成立した作品特有のスリルや爽快感をたっぷり味わえた。

2009/04/29(水)(小吹隆文)

no name kyoto

会期:2009/04/26~2009/05/05

元立誠小学校[京都府]

3月に横浜のZAIMで行なわれた同展が、GWの京都でも開催。キュレーターによる企画展ではなく、作家主導で幅広い表現が見られるとあって、個々の作品に注目して鑑賞した。私にとって馴染みの薄い首都圏の作家に興味が偏ってしまったが、特に加藤翼の作品は面白かった。それは、巨大な幾何学形態のオブジェを大勢の人間が力を合わせてひっくり返すというものだ。オブジェを倒す行為に必然性があるのかはともかく、倒れた瞬間は見ているこちらもカタルシスに包まれる。今回は映像だったが、一度生で見たいものだ。

2009/04/29(水)(小吹隆文)

万華鏡の視覚──ティッセン・ボルネミッサ現代美術財団コレクションより

会期:2009/04/04~2009/07/05

森美術館[東京都]

内覧会ではうかつにも見逃してしまったが、傑作があった。それは、リテュ・サリンとテンジン・ソナムによる《人間の存在に関する問答》(2007年)という作品。チベット仏教の修行僧たちが繰り広げる弁証法的な問答を映し出す短い映像作品だが、これがほんとうにおもしろい。一方の修行僧が両手を打ちながらテンポよく次々と問いを発し、軽いプレッシャーを与えながら他方の修行僧に応えさせる訓練法だ。三段論法にもとづいているらしいが、おもしろいのはその応酬の論理的な整合性というより、むしろそのやりとり自体がある種の「芸」として研磨されているところ。文字どおり坊主頭の修行僧たちは一見するとどれも同じように見えるが、彼らの所作や身ぶり、言葉づかいを注意深く見てみると、ある一定の型式を踏まえながらも、それぞれ異なる「芸」を身につけていることがよくわかる。こんな修行であれば、ぜひやってみたいと思わせるほど、楽しそうだ。

2009/04/29(水)(福住廉)

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