artscapeレビュー
2009年06月01日号のレビュー/プレビュー
佐藤貢 展
会期:2009/05/09~2009/05/31
PANTALOON[大阪府]
和歌山の海岸に流れ着いた廃品で詩的なオブジェを作り出す佐藤貢。作品の方向性はこれまでと変わらないが、本展では点数を少なめにして作品単体よりも空間全体をどう見せるかに意識が向いていた。漁網を多用したのも今回の特徴で、吹き抜け空間に吊り下げるなどして、複数の作品をつなぐ役割を果たしていた。
2009/05/09(土)(小吹隆文)
ツェ・スーメイ
会期:2009/02/07~2009/05/10
水戸芸術館現代美術センター[茨城県]
ルクセンブルク出身の新進気鋭のアーティスト、ツェ・スーメイの個展。広くは音楽と美術をテーマにしているらしいが、全体的には一発ネタをコンセプチュアルに装ったような作品が多く、その細かいネタが立て続けに連続するから、飽き飽きしてくる。ただし、群青色のインクを循環させる噴水の作品だけはそれなりに見応えがあった。
2009/05/09(土)(福住廉)
日本の自画像 写真が描く戦後 1945-1964
会期:2009/05/02~2009/06/21
世田谷美術館[東京都]
1945年の敗戦から1964年の東京オリンピックまでの戦後日本を写真によって検証する展覧会。石元泰博、川田喜久治、木村伊兵衛、田沼武能、東松照明、土門拳、長野重一、奈良原一高、濱谷浩、林忠彦、細江英公、あわせて11人の写真家による168点のモノクロ写真が展示された。木村や土門、長野などのジャーナリスティックな傾向と、川田や東松、細江のような美学的な傾向が混在することで、戦後日本の歴史の厚みが表現されていたように思う(ただし、写真家はいずれも男性である)。なかでも衝撃的だったのが、田沼武能の《紐で電柱につながれた靴磨きの子ども》。敗戦後の銀座で犬のように電柱に縛りつけられた子どもは、とても「子ども」とは思えない、生きることに貪欲な労働者の眼をしている。
2009/05/12(火)(福住廉)
斎藤義重 '09複合体講義 創造と教育の交錯点─中延学園・TSA・朋優学院─
会期:2009/04/08~2009/05/16
朋優学院 T&Sギャラリー[東京都]
斎藤義重の「創造」と「教育」を同時に回顧する展覧会。高等学校内の地下のギャラリーで、斎藤義重の言葉や複合体シリーズの再制作作品、ミニチュア模型、講義などを記録した映像作品などが発表された。展示を見ていくと、斉藤義重がいかに「教育」を重視していたか、そしてそこから数々の美術家が成長していったかが理解できるが、美大教育とは異なるオルタナティヴな教育の伝統がほとんど見失われてしまったいま、その重要性を改めて痛感せざるを得ない。
2009/05/12(火)(福住廉)
荒木由香里 展 Waltz
会期:2009/05/13~2009/06/13
studio J[大阪府]
ハイヒール、額縁、カメラなどに造花やガラス片を貼り付けたオブジェ、鳥の羽で覆われたメトロノーム、頭部が花に置き換えられた人形などのオブジェを出品。シュルレアリスムの影響というよりも、携帯電話やネイルに顕著なデコ文化に近い感じで、最初こそ不気味だったが、見慣れるうちに可愛らしいと感じるようになった。細部まで手抜きのない仕上げの美しさにも感心した。
2009/05/14(木)(小吹隆文)