artscapeレビュー
フレンチ・ウィンドウ展
2011年05月15日号
会期:2011/03/26~2011/08/28
森美術館[東京都]
震災のため開催が1週間ほど遅れた企画展。遅れただけでなく、天井から吊ったりする作品はいまだ展示を見合わせている。まあ展覧会自体が中止にならなかっただけでもよしとしなければ。「デュシャン賞に見るフランス現代美術の最前線」とのサブタイトルのついた同展は、フランス最大の現代美術コレクターの団体ADIAFが主催する「マルセル・デュシャン賞」の10周年を記念し、グランプリ受賞者らの作品やデュシャンの代表的レディ・メイドを出品するもの。驚いたのは、フランスには現代美術コレクターの団体が(しかも複数)あること、そのひとつがデュシャン賞を主催していること。これはおそらく年々注目度を高めているイギリスのターナー賞に対抗しようとしたものだろうけど、それをコレクターの団体が(ポンピドゥー・センターやFIAC[International Contemporary Art Fair]とともに)主催するというのだからスゴイというか、むしろマーケットの動向に左右されないか心配になるくらいだ。作品はデュシャン賞らしくレディ・メイドが多いなか、リヒターばりの都市風景を描くフィリップ・コニェ、煙の上がる中世の街並を他人に描かせたローラン・グラッソらの絵画や、廃物を寄せ集めたトーマス・ヒルシュホーンのインスタレーションにそそられた。ちなみにデュシャン作品はすべて国内(大半は京都近美)からかき集めたもの。日本はデュシャンの大コレクターなのだ。でもこれはレディ・メイドのレプリカのマルチプルだから、比較的入手しやすいけどね。
2011/04/12(火)(村田真)