2018年10月15日号
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artscapeレビュー

原田晋「The Ghost」

2011年05月15日号

会期:2011/04/16~2011/05/07

art & river bank[東京都]

本展のキュレーションを担当した友岡あゆ子が、リーフレットに東日本大震災後にテレビで放映され続けた被災地の映像について書いている。最初の頃は衝撃的な映像に心を痛めていたのだが、次第に見続けることに疲労感を覚えていく。「繰り返し放送されることで、実際に被災していない人が精神的なダメージを受けてしまう」ということも起こってくる。たしかに、日々とめどなくテレビの画面から送り届けられる映像に晒され続けていると、心身が麻痺状態に陥っていくように感じる。それはたしかに、さまざまな刺激を与えてくれるよくできたスペクタクルなのだが、反面あらゆる情報が寸断され、等価値に並べ替えられてしまうということでもある。現実感の喪失や無感動状態、また逆に過剰反応による「精神的なダメージ」が、そこから生じてくるのだ。
原田晋が2002年の初個展「window-scape...face」(Space Kobo & Tomo)以来ずっと試みてきたのは、この垂れ流し状態のテレビの画面を写真で撮影することで「逆操作」しようとする試みだった。動画が静止画像に変換され、さらにコラージュ的に再構成されることで、テレビを見ている時には気がつかなかった、映像そのものの無意識や身体性のようなものが浮かび上がってくる。その「逆操作」の手つきは、個展の開催を積み重ねることで、より洗練されたものになっていった。今回の5台のテレビモニターで作品を上映する「Ghost」では、画面の切り替えの速度をコントロールすることで、むしろ麻痺状態や「精神的ダメージ」を強化してしまうようなインスタレーションが設定されている。ただ、ザッピングされている映像がおおむね美しく穏当なものなので、その試みがまだ中途半端に終わっていることが惜しまれる。映像の強度をもっと上げて、観客に暴力的な揺さぶりを掛けるような仕掛けを、本気でつくってみてはどうだろうか。

2011/04/27(水)(飯沢耕太郎)

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