artscapeレビュー
彰国社引越し
2011年05月15日号
彰国社[東京都]
東日本大震災の影響により、急きょ彰国社は老朽化した自社ビルを出て、そう遠くはない新しい仕事場に引越しを決めた。その際、被災した東北大に本や雑誌を寄贈いただけることになり、普段は入れない資料室で作業する機会を得た。竣工当初の彰国社ビルの写真を見ると、増築前のために、プロポーションは細く、また両側には小さな家屋が並ぶ。90年代からここのビルには何度も打ち合せで訪れたが、会議室の窓から見る市ヶ谷駐屯地の風景も変わってしまった。引越が終わると、すぐに解体するという。自分がいま何階にいるのかわからなくなるようなステップ・フロア、力強い手すりなど、失われることを知って、改めて思い出深い空間であることに気づく。
2011/04/24(日)(五十嵐太郎)