2018年06月15日号
次回7月2日更新予定

artscapeレビュー

2011年05月15日号のレビュー/プレビュー

pippi 個展「paper piecing」

会期:2011/04/20~2011/05/01

Sewing Gallery[大阪府]

草花と木が生い茂る敷地にある古い洋裁学校の校舎にあるギャラリー。はじめに絵や模様を描き、くりぬいた「型紙」でパッチワークをつくることをpaper piecingというのだそうだが、会場には平面作品のほか、キルト用の大きな刺繍枠と布をつなげたものに幾何学的な図形や3人の女の子のイメージを描いた、一連のつながりを想像させる作品が展示されていた。なかでもとても気に入ったのが《阿字子は毎日本を読む》という絵画。野溝七生子の『山梔(くちなし)』という小説に登場する少女がモチーフになっているそうなのだが、偶然にも会場の外にもクチナシの木があって驚いたというエピソードも聞いたせいかよけいに印象に残った。まるで絵本にでも登場しそうなその個性的な空間の雰囲気にもよく似合っていた。


paper piecing展、会場風景

20011/04/29(金)(酒井千穂)

現代美術の展望「VOCA展2011──新しい平面の作家たち」

会期:2011/03/014~2011/03/030

上野の森美術館[東京都]

上野の森美術館は震災後、上野公園内の文化施設のなかでも一番早く再開したと聞いていたのだが訪れることができたのは結局最終日だった。入選者36名の作品が展示された今年は、関西でも活動を展開している馴染みある作家たちも多く、楽しみにしていた。VOCA賞受賞の中山玲佳の《或る惑星》は、画面に塗り重ねられた「闇」の色が想像以上に深く感じられた。空間的な奥行きもさることながら、一瞬の儚い幻影を薄い膜で被って留めようとしているかのような刹那的な印象があり、いっそう物語性を濃厚にする絵の具の透明感が美しかった。全長2メートルを超える大きな作品がほとんどだった会場では、石塚源太の漆作品や青山悟の小さな刺繍の表現は特に目を惹いた。しかし他の作品がピンとこなかったというわけではなく、全体にバラエティに富んだ内容だと感じたし、作家の意気込みやパワフルな制作態度が感じられるものがいくつもあった。なかでも、記憶のイメージや視覚の認識を揺さぶる水田寛の《マンション15》、鮮やかな色面で構成された冬耳の《永遠なんて言わないで。》は、これまで私が見たものとは異なる表現への挑戦がうかがえて新鮮だった。作品から新しい地平に立つ作家自身を想像するのは楽しい。震災後、胸がつかえるような重苦しい気持ちを引き摺っていたが、こちらも勇気づけられる気分になり、駆け込みでもやはり見に行ってよかったと思った。

2011/03/30(水)(酒井千穂)

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中山明日香「empirical garden」

会期:2011/03/01~2011/03/29

INAXギャラリー[東京都]

京都市立芸術大学の大学院に在籍中の中山明日香の個展。会場の壁面いっぱいに4枚の大きな油彩作品が展示されていた。鮮やかなピンクやブルーなどの色彩と、日常的風景のなかに描かれた肉の塊やブラジャーなどのモチーフのインパクトが強烈。一見、描かれた風景や室内の様子が幻想的で美しいのだが、その奇妙な光景は、暴力的なイメージも連想させて一抹の不安を煽るような不穏な気配。ただ、じわじわと喜怒哀楽のさまざまな記憶やイメージをひとつの世界にあぶり出していく物語の余韻を残して、他の作品にも興味がそそられる個展だった。今後も楽しみだ。

2011/03/30(水)(酒井千穂)

MOT アニュアル2011「Nearest Faraway──世界の深さのはかり方」

会期:2011/02/26~2011/05/08

東京都現代美術館[東京都]

11回目の「MOTアニュアル」。今年は池内晶子、椛田ちひろ、木藤純子、関根直子、冨井大裕、八木良太の6人の作家が紹介された。カラフルなスーパーボールやキッチン用のスポンジを用いた冨井大裕の作品、池内晶子の白い糸を張り巡らせた空間、ボールペンの夥しい筆致の迫力と細やかさに目を見張る椛田ちひろの巨大な作品、光と影の穏やかな移ろいを密やかに提示した木藤純子のインスタレーションなど。身近にある素材やさまざまな物事を手がかりにシンプルな手法で作品を展開する作家達の展示は、どれもそれぞれに繊細で、些細であってもなにかしらの「気づき」や驚きを与えるものであった。こちらが積極的に作家の意図や心中を推し量って想像力をフルに働かせることではじめて堪能できるというデリケートな要素も強い展覧会で、会場全体に静かな緊張感が満ちている。順路最後は、カセットテープが巻き付けられたボールをプレイヤーにセットし、そのテープの音に耳をかたむけるという八木良太の作品空間だったが、ここで少しほっこりと気分が和んだ。とても良い順番だったし興味深い内容の展覧会であった。ただ、開館時間が短縮されていると美術館に着くまで知らず、同時開催の田窪恭治展を断念してしまったのは心残り。

2011/03/30(水)(酒井千穂)

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南洋堂書店企画の建築トランプ第二弾「ARCHIBOX in JAPAN」(選者:倉方俊輔、イラスト:TOKUMA)

発行所:南洋堂

発行日:2011年3月

南洋堂の建築トランプ第二弾。第一弾は、筆者による建築のセレクションと『日経アーキテクチュア』の編集者、宮沢洋のイラストで作成したが、完売につき、第二弾の近代建築トランプ「アーキボックス・イン・ジャパン」が新しく大阪市立大に赴任した建築史の倉方俊輔による選定とTOKUMAの図柄で発売された。とりあげる建築は、大浦天主堂から東京スカイツリーの最新物件まで。今回のトランプでは、市役所、美術館、図書館、小学校、ビル、自邸など、13のビルディングタイプを数字に対応させ、4種の絵柄は、スペード=1924年以前/ハート=1925-49年/クラブ=1950-74年/ダイヤ=1975年以後という時代区分のマトリクスを使う。ジョーカーには、建築のユニークなディテールを用いる。全部を知っていれば、建築ツウを自慢できるだろう。ちなみに、こうした建築トランプは、すでに海外で90年代につくられており、モダニズム、ポストモダン、ディコンストラクティヴィズムなどを類型化していた。

2011/04/01(金)(五十嵐太郎)

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