2018年10月15日号
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artscapeレビュー

写真新世紀大阪展 2011

2011年05月15日号

会期:2011/04/05~2011/04/27

アートコートギャラリー[大阪府]

東日本大震災を経ることで、作品の見え方が変わってくることがある。2010年度の「写真新世紀展」は昨年11月に東京都写真美術館で開催され、優秀賞に選ばれた齋藤陽道、佐藤華連、柴田寿美、高木考一、谷口育美のなかから、佐藤華連の「だっぴがら」がグランプリを受賞した。その時の展示はむろん見ているのだが、それが大阪市・天満橋のアートコートギャラリーに巡回したのをあらためて見て、特に齋藤陽道の作品「同類」の印象が違ってきていることに気づいたのだ。
齋藤は彼自身が聾唖のハンディを負っており、作品のなかにも障害を持つ人たちが登場してくることが多い。波打ち際に置き忘れられたように写っている車椅子に、裸の赤ん坊がぽつんと座っている写真などもあり、人間の存在の寄る辺のなさ、にもかかわらずいきいきと輝きを増す生命力を捉えようとしているのがわかる。作品に寄せたコメントに「大きな連なりの流れのなかにいる、ひとつのものたち。その意味においてすべては同類だ」とあったが、自分を含めて連綿とつながっていく命の流れを、肯定的に実感しつつ写真を撮っているのだろう。単純に明るい写真というだけではなく、ほの暗い闇の部分にもきちんと目配りができている彼の作品世界の広がりが、震災後のいま、切実に胸に迫ってくるように感じた。赤々舎から写真集の出版が決まったという話も伝わってきた。それもとても楽しみだ。

2011/04/23(土)(飯沢耕太郎)

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