2018年02月15日号
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artscapeレビュー

川島小鳥『未来ちゃん』

2011年05月15日号

発行所:ナナロク社

発行日:2011年4月1日

まさに「お待たせしました!」という写真集。僕は昨年4月のテルメギャラリーでの松岡一哲との二人展の頃からずっと注目していたし、一般的には『BRUTUS』(2011年12月15日発売号)の写真特集の表紙で「ぶっ飛んだ」のではないだろうか。刊行がこれだけ待ち望まれていた写真集は、このところあまり記憶にない。本格的な写真集の刊行前に、講談社出版文化賞を受賞したというのも前代未聞ではないだろうか。
写真にとって被写体は絶対的とはいえないが、相当に重要な要素であることは間違いない。この写真集の場合、主人公である新潟県佐渡島の女の子「未来ちゃん」の天衣無縫な野生児ぶりはめざましいものがある。体を一杯使って走り回り、転げ回り、青洟を垂らしながら泣き笑うその姿を見ているだけで、心のなかに温もりが広がるような愉しさを感じる。ただ被写体がいくらよくても、それをきちんと受けとめて作品化する技と力が必要なわけで、1980年生まれの川島小鳥にはそれがしっかりと備わっているということだろう。もう既に大ブレイクの兆しが見えているので、このままどんどん突っ走ってもらいたい。また祖父江慎による写真集の装丁・デザインもさすがというしかない。横位置の写真を上下に重ねるレイアウトを採用したことで、写真の勢いが加速しているように感じる。ページをめくっていく速度が、写真が目の前にあらわれてくるリズムとぴったりシンクロすると、解放感に包まれ、思わず笑いがこぼれてしまう。
なお写真集の刊行にあわせて、東京・渋谷のパルコファクトリーで写真展が開催された(2011年4月8日~24日)。こちらは展示されている写真の数が250点余りに増え、「未来ちゃん」のパリ旅行時のスナップも入っている。悪くないが、大小の写真の散りばめ方がややうるさ過ぎたのではないだろうか。写真集の方が、すっきりと目に馴染んでくるように感じる。

2011/04/08(金)(飯沢耕太郎)

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