2017年11月15日号
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artscapeレビュー

米田拓朗「笛吹川」

2012年05月15日号

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会期:2012/04/03~2012/05/06

KULA PHOTO GALLERY[東京都]

米田拓朗は5年ほど前から東京・新宿のphotographers’ galleryのメンバーとなり、同ギャラリーと隣接するKULA PHOTO GALLERYで、1年に1回くらいのペースでコンスタントに個展を開催してきた。だがこれまでは、どうもうまく彼の写真の世界をつかみ切れなかった。そのもどかしさが、今回の「笛吹川」のシリーズを見てかなり払拭されたように感じた。
笛吹川は、山梨県を流れる富士川水系の支流で、日本三大急流のひとつとされ、これまでたびたび氾濫して大洪水を引き起こしてきた。特に1907年の「明治40年大水害」のときには、河の流路が南西方向に7キロにわたって変わってしまうほどだったという。米田はこの川の、水中に沈んだり周辺に転がったりしている石にカメラを向けている。石の多くは急流によって削られて丸みを帯び、卵や赤ん坊の頭を思わせる有機的な形をとる。描写そのものはストレートで即物的なのだが、どこか見る者のイマジネーションを触発するそのたたずまいに、不思議に心惹かれるものを感じた。おそらく米田も、多種多様な石たちにカメラを向けつつ、彼らとの対話を自然体で楽しんでいたのではないだろうか。
米田はこれまで、都会の通行人の顔を中心にクローズアップで捉えたスナップショットのシリーズや、笛吹川流域の桃農家を取材した作品などを発表してきた。被写体を選択し、方法論を定め、撮影を進めていくプロセスに、揺るぎない意欲を感じるものが多かったが、その方向性はかなりばらついていた。だがこの「笛吹川」は、彼の写真家としての可能性を開花させていく重要な分岐点になっていくかもしれない。文字通り、石が転がり始めたようだ。

2012/04/18(水)(飯沢耕太郎)

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