2017年11月15日号
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artscapeレビュー

藤原敦「詩人の島」

2015年04月15日号

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会期:2015/03/26~2015/04/02

ZEN FOTO GALLERY[東京都]

藤原敦は子供の頃に、ハンセン病患者を収容する長島愛生園がある岡山県長島を訪ねたことがあった。彼の叔父がその施設の事務部長を務めていたのだという。手つかずの自然に感動するとともに、島の住人たちの苛酷な運命に小さな胸を痛めた写真家は、35年後に島を再訪し、そこで衝撃的な言葉と出会う。「深海に生きる魚族のように 自らが燃えなければ何処にも光はない」。ハンセン病の歌人、明石海人が、歌集『白描』(1939年)の序文に記したこの言葉は、映画監督、大島渚の座右の銘でもあった。その後、4年おきに島を訪れて撮影した写真をまとめて展示したのが、今回の個展「詩人の島」である。
藤原の視線は、必ずしも明石海人の足跡のみを辿ろうとするのではなく、島の風物や愛生園の建物などに等価に向けられている。錆びた鉄の扉、もう使われていないトイレ、石室におさめられたマリア像などにカメラを向け、過去の時空へと想像力のベクトルを伸ばしていこうとする、揺るぎない意思がしっかりと伝わってきた。ハンセン病はたしかに患者たちに課せられた重い足枷なのだが、明石のようにその運命を逆手にとって、表現者としてみずからを燃やし続けようとした者もいる。そんな「詩人」たちの仕事に対する共感が、縦位置10点、横位置8点の作品に刻みつけられており、居住まいを正させるようないい展示だった。
なお展覧会にあわせて、蒼穹舎から同名の写真集が刊行された。『南国頒』(2013年、蒼穹舎)、『蝶の見た夢』(2014年、同)に続き、藤原の写真集は3冊目になる。どれもよく考え抜かれた構成の、クオリティの高い写真集だ。

2015/03/30(月)(飯沢耕太郎)

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