2018年04月15日号
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artscapeレビュー

2017年06月01日号のレビュー/プレビュー

エンリック・ミラージェス《サンタ・カタリーナ市場》

[スペイン]

エンリック・ミラージェスによる《サンタ・カタリーナ市場》へ。19世紀の市場をリノベーションしたものだが、壁は残して、果物や野菜などから着想を得た鮮やかなグラフィックを伴う、激しくうねる屋根を架けたことが大きな特徴である。また室内の店舗群は非直交座標系によって再配列し、端部に地下遺跡を見せる場も設けた。そして見逃しそうだが、建物の裏側にあたる一番後ろの壁には旧市場の素材を用いたアート的なレリーフが制作されており、ミラージェスの卓抜したセンスが感じられる。この市場の近くに長く住んでいた設計者の熱意が伝わる傑作だ。

2017/03/30(木)(五十嵐太郎)

《バルセロナ市歴史博物館》

[スペイン]

ローマ時代の市壁が隣接する近世の館をリノベーションした、一見とても地味な建築だけど、市歴史博物館が、印象深い空間の体験だった。地下に降りると、洗濯屋、魚の塩漬け、ワイン製造所などローマ時代の遺跡の上をブリッジでずっと歩く。古代と現代の対比なら、それほどめずらしくはない。だが、ここはさらに中世の教会や墓地が上書きされたことも保存・表現し、パランプセスト的な時空間をブツで感じる! その上が近世で、外に出ると現代なのだから。以前、首都高解体による日本橋再生の「美しい日本」案を批判した『美しい都市・醜い都市』(中央公論新社、2006)で表明したのも、複数の時間が層をなす都市が望ましいのでは、ということだった。市歴史博物館は組積造が残るヨーロッパならではだが、地下の展示を見て、外の地上に出ると、これまでと風景の見え方が変わる。

2017/03/30(金)(五十嵐太郎)

《サンタ・エウラリア大聖堂》ほか

[スペイン]

オペラを催すリセウ劇場、自治政府と市庁舎が向き合うサン・ジャウマ広場など、旧市街を歩く。ここはセルダのグリッドに従わないエリアなので、道に迷いやすい。そして大聖堂は、フランスのゴシックと構成やプロポーションは違うが、重ね書きと数世紀の時間がつくり出す石造大空間の神聖さに比べると、サグラダはひとりの個性が突出したテーマパークに見えてしまう。

写真:左上から=リセウ劇場、市庁舎、自治政府、サン・ジャウマ広場、右=《サンタ・エウラリア大聖堂》

2017/03/30(金)(五十嵐太郎)

《グエル邸》

[スペイン]

ガウディの《グエル邸》へ。まずは装飾的な細部の凝り方も凄まじいし、日本趣味風にも見える空間が興味深い。が、気になったのは、上階にパイプオルガンまで導入し、音楽を聴く小ホール的な吹抜けを中心に設け、常識的な意味での家を超えた「超豪邸」であること。金持ちと才能ある建築家の出会いは、つくづく重要だと痛感する。

2017/03/30(金)(五十嵐太郎)

《ニノト市場》

[スペイン]

マテオ・アルキテクトゥラによるリノベーションは、壁はあまり触らず、新しいアイデンティティとして特徴的な屋根を与えたミラージェスの《サンタ・カタリーナ市場》とは逆の手法だった。もとの三角屋根群を残しながら、古い壁を抜いて明るい大空間とし、店舗も整然とした配置であり、地下にスーパーマーケットを入れる。

2017/03/30(金)(五十嵐太郎)

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