artscapeレビュー

佐藤卓「光で歩く人」

2012年06月01日号

会期:2012/04/23~2012/05/05

巷房[東京都]

「光で歩く人」とは、ソーラーパネルから得られるわずかなエネルギーで歩き続ける小さなロボット。デザイナー・佐藤卓がタカラトミーの依頼で試作したが、諸事情でお蔵入りになってしまっていたものを、震災後に完成させた作品だという。ロボットたちは、古代の埋もれ木や石でできた台の上に立ち、歩き続ける。3階ギャラリーでは窓から入る自然の光で、地階では人工的な光のエネルギーを得て、歩き続ける。私が訪れた日は生憎の天気で空は暗く、3階のロボットたちは脚を休めていたが、それでも地階のロボットたちはガラスのドームや金属のカゴの中で、電灯に照らされながら歩いていた。自然のリズムとは関わりなく歩き続けるためには、人工的なエネルギーを絶えることなく供給し続けなければならなない。ふたつのフロアのロボットには、私たちの文明の過去と現在が重ねられていると同時に、未来への選択肢が示されているのではないだろうか。[新川徳彦]

2012/05/03(木)(SYNK)

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