artscapeレビュー

武蔵篤彦 展

2012年06月01日号

会期:2012/05/03~2012/05/26

MATSUO MEGUMI + VOICE GALLERY pfs/w[京都府]

本展のメインというべきは、3点の平面の大作と台形立方体が連続する柱状の作品1点だ。それらは不定形のパターンが連続する抽象画をデータ化してインクジェットプリントで出力し、その上から絵の具やメディウムを塗り重ねたものである。ジャンルの特定は難しいが、武蔵のこれまでの仕事から判断すればモノタイプ版画になるだろう。ほかには、ラムダプリントと絵画を組みあわせた2000年制作の作品なども発表されているが、それらは新作と対比するために出品されたと思われる。写真ではすでにインクジェットが普及しているが、版画でもこれだけの表現ができるとは知らなかった。美術史上、技術的発展が表現を一変させた例は幾つもある。今後、デジタル技術の発達は美術にどのような影響を与えるのだろう。そんな夢想へと誘われる機会だった。

2012/05/08(火)(小吹隆文)

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