artscapeレビュー
國府理 展「水中エンジン」
2012年06月01日号
会期:2012/05/22~2012/06/03
アートスペース虹[京都府]
画廊の展示室は巨大な白い水槽で占拠されていた。水槽には鎖で吊られ、多数のパイプやコードが接続された自動車のエンジンが沈められている。始動させると、くぐもった音を発しながら生き物のように蠢くエンジン。その姿は捉えられた未知の生物のようだ。また、福島第一原発の現状を暗喩していることは誰の眼にも明らかであろう。エンジンを水中に沈めるという荒業ゆえ、会期前半にはトラブルが頻発したが、後半には見事に持ち直して本来の姿を観客に見せることができた。昨年来、多くの美術家が原発事故にコミットした作品を発表してきたが、本作は私が見たなかでは最良の表現物である。
2012/05/24(火)(小吹隆文)