artscapeレビュー

Mètis─戦う美術─

2012年06月01日号

会期:2012/04/07~2012/05/20

京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA[京都府]

3.11以後の不穏な日常を生きるための「戦術」(Mètis)をテーマとした展覧会。30歳前後のアーティスト、6人(組)が参加した。企画者のステイトメントにはセルトーが引用されていたので、政治的ないしは社会的なアートを期待したが、実際に発表された作品の多くは内向的で、どこが「戦術」なのか、理解に苦しんだ。必ずしも3.11に直接的に言及する必要はないとはいえ、私たちの目前に大きく立ちはだかる社会という壁を相手に、これではとても満足に闘うことはできまい。唯一、巨大な髑髏のオブジェを中心に映像インスタレーションを構成したヒョンギョンだけは、髑髏に包丁を、天井に有刺鉄線を、映像にメリー・ホプキンが唄う「Those Were the Days」を、それぞれ用いるなどして、辛うじて日常生活にひそむ暴力性を詩的に表現しえていたと思う。

2012/04/21(土)(福住廉)

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