artscapeレビュー

砥上淳 写真展「弁当の味」

2013年03月01日号

会期:2013/02/05~2013/02/17

Kobe 819 Gallery[兵庫県]

高齢者専門の弁当屋で配達の仕事をしている砥上は、毎日老人宅に通ううち、懇意になった数名のポートレートを撮影するようになった。作品に写っているのは、深く年輪を刻んだ彼ら彼女らの姿であり、じめっとした室内の風景である。なかには寝たきりや痴呆と思しき人もおり、室内の薄暗さや散らかり具合も相まって、つい暗い気持ちになってしまう。社会の暗部を訴えるジャーナリスティックな作品だと思う人も多いだろう。しかし、作家本人にそんな意識はないらしく、あくまでも客観的に対象と向き合っているのだと言う。だとしたら、筆者が作品から感じた問題意識は、自分自身に潜む偏見なのだろうか。写真を通して自分の未知の一面を垣間見た。

2013/02/09(土)(小吹隆文)

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