2022年11月15日号
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artscapeレビュー

宮崎学 自然の鉛筆

2013年03月01日号

会期:2013/01/13~2013/04/14

IZU PHOTO MUSEUM[静岡県]


これはおもしろい。野生動物の生態を記録した写真だが、写し出されているのはクマやサル、カモシカ、フクロウなど、いずれも私たちの自然環境に生息する動物ばかり。彼らの知られざる生態を、野外に設置した赤外線カメラによって隠し撮りした170点あまりの写真が一挙に展示された。
暗闇の中に浮かび上がる動物たちの姿は、まるで劇場でスポットライトを浴びる役者のようで、じつに様になっている。カメラに悪戯するクマの姿は、どこかの大柄なカメラマンのようだ。じつは動物と人間の境界はそれほど明確なものではないのかもしれない。思わず、そんな気にさせられるほど、宮崎の写真は魅力的である。
ただ、だからといって宮崎の動物写真は動物を擬人化する視線に終始しているわけではない。むしろ生物としての動物を徹底的に即物的に見る視線もある。もっとも代表的なのが、動物の屍を定点観測した写真のシリーズだろう。ニホンカモシカの亡骸は、まずウジ虫がわき、他の動物によって毛がむしり取られ、肉を喰われ、やがて雨が骨を崩すと、ゆっくりと土に沈んでゆく。スライドショーで淡々と見せられるので、生物の死の先が自然に直結していることがよくわかる。「土に帰る」というクリシェより、むしろ「自然になる」という言い方のほうがふさわしい。頭蓋骨が最後まで原形をとどめているからだろうか、肉体が土に溶け合い、一体化しているように感じられるのだ。
死を象徴化ないしは抽象化する現代社会の内部ではなかなか見ることができない、むき出しの死を目撃することができる貴重な写真展である。

2013/02/18(月)(福住廉)

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