artscapeレビュー
[デーデーデージー]グルーヴィジョンズ展
2013年04月01日号
会期:2013/03/12~2013/04/26
dddギャラリー[大阪府]
デザインスタジオのグルーヴィジョンズ(GROOVISIONS)のデザインワーク637点が集結した展覧会。1993年の設立以来の作品が時代順に展示されるディスプレイを想像していたのだが、実際の会場構成はまったく違っていた。dddギャラリーの四角いスペースに置かれているのは、白く細長い展示台ひとつと輸送用木箱ひとつのみ。白い展示台は部屋全体を斜めに横切るように配置され、それはギャラリーのガラスのファサードを越えて建物の外側にまで延びている。シンプルだが、インパクトのある展示だ。
展示台の上には無数の作品が整然と配置されている。そこにはグルーヴィジョンズのトレードマークともいえる人物モティーフ「chappie」がフィーチャーされたデザインもあれば、東京・京橋の「100%ChocolateCafe.」の商品パッケージや雑誌『Casa Brutus』の表紙、影絵のようなグラフィックデザインなど、これもあれもグルーヴィジョンズだったのかと思うような作例もある。商品の数も多いが、種類の多さも半端ではない。本やパッケージのグラフィックは無論のこと、ヘルメットやスケートボード、扇子のデザインまであるのだ。一つひとつをじっくり見ていくと半日はかかるだろうが、その作業はきっと楽しい。来場者は必ずや展示台の上に自分の所有品を見つけるだろう。
ランダムに見える商品の配置には、じつは大きな仕掛けがある。ギャラリーの外側に突き出た部分の端から部屋の奥の端に至るまで、展示台を埋め尽くす商品はマンセル表色系(色の物差しの一種)のごとくピンクから赤、オレンジ、黄、グレー、緑、青へと変化する色のグラデーションをつくっているのだ。個々の商品は必ずしも単色で構成されているわけではないから、商品の群れがつくるグラデーションは、印象派の筆触分割がもたらす効果と同様、綿密な計算のもとに生じている。思い起こせば、chappieが世に出たとき、誰もがその造形はもとより、繊細な色彩にも衝撃を受けた。カラフルでありながら、どこかしら日本の伝統色を想わせる落ち着きをもったその色は、輪郭線を欠いた人物像を彩ることでいっそう際立っていたのだ。そうしたグルーヴィジョンズの色へのこだわりがじつにうまいやり方で表現されたこの個展には脱帽するしかない。[橋本啓子]
2013/03/23(土)(SYNK)