2020年02月01日号
次回2月17日更新予定

artscapeレビュー

岡村桂三郎 展

2013年04月01日号

会期:2013/03/04~2013/03/16

コバヤシ画廊[東京都]

多くの場合、美術家が追究する主題は生涯変わることがない。だが、その表現は幾度かの変転を遂げることは少なくない。これが近代以前の絵師たちにも通底する法則であることを考えると、その変転はたえず新しさを求める近代社会の論理の現われというより、むしろ絵を描いたりものを造形化したりする、芸術の歴史全般に通底するものつくりの原型と言えるかもしれない。その瞬間を目撃することは、美術家の仕事を持続的に見守る鑑賞者にとって、滅多にあることではないが、だからこそ鑑賞者ならではの醍醐味と言えるだろう。
岡村桂三郎といえば、龍や象、蛸、魚など、人智を超えた神獣をモチーフにした作風で知られているが、今回の新作展で発表された作品には、画面にいくつもの人の顔が出現していたので驚いた。技法が変わったわけではない。しかし、画面のなかで正面を向いてこちらを見据える人の顔は、これまでの神獣以上に、得体の知れない迫力を放っていた。眼球が透明だからだろうか、仮面をかぶっているようにも見えるから、表情から心情をうかがい知ることすらできない。亡くなった者たちへの鎮魂だろうか。あるいは身の程を忘れた現代人の非人間性の象徴なのだろうか。すぐれた現代アートの多くがそうであるように、岡村の新作は同時代を生きる私たちに大いなる謎を残した。
2000年代に登場した岡村以後の日本画の描き手たちの多くが、様式の自己模倣に陥り、そのスパイラルから抜け出す糸口を探しあぐねているなか、岡村のたゆまぬ自己探究は乗り越えるべき山脈として、彼らの眼前に悠然と立ちはだかっている。

2013/03/06(水)(福住廉)

2013年04月01日号の
artscapeレビュー

文字の大きさ