artscapeレビュー
平久弥 展 Exit─New York─
2013年04月01日号
会期:2013/02/22~2013/03/16
フォト・リアリズムの手法を用い、徹底した写実描写で知られる画家・平久弥の個展。会場は2フロアあり、下の階ではニューヨークの地下鉄やホテルの室内を描いた新作が展示されていた。どの作品にも「EXIT」の表示があり、出入口もしくは非常口付近が描かれているようだ。また上の階では、東京やシンガポールのエスカレーターなどを描いた近作が展示されていた。フォト・リアリズムの画家のなかには、人間の視覚やカメラ・アイとは異なるパースペクティブを忍ばせて絵画の独自性を主張する者もいるが、平はひたすら写真に忠実に描画している。そこには究極の没個性というか、己さえも消し去った空虚な空間を描き切ろうとする欲望が感じられる。ただし、画中に登場する光のバリエーションは多彩で、場の選定には入念なリサーチが行なわれているようだ。
2013/03/06(水)(小吹隆文)