2020年04月01日号
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artscapeレビュー

ダンス企画おやつテーブル『お葬式』

2013年04月01日号

会期:2013/03/23~2013/03/24

RAFT[東京都]

岡だ智代、おださちこ、木村美那子、まえだまなみの4名によるおやつテーブルは、2007年から継続的に公演を催しているダンスグループ。世代の違う、ダンス出自もさまざまな女性たちが、「おやつ」というキーワードに象徴されるような、デリケートで味わいのあるダンスを踊る。「ダンス」というと手脚を大きく伸ばしてアグレッシヴに運動するあれやこれやをイメージするかもしれないけれど、おやつテーブルはそういう「ダンス」とは相当異なる。あえていえば(とくに初期の)ピナ・バウシュに近い。日常のしぐさを取り出して、反復し、見る者に何かを知覚させる。それは甘く切なく儚い生というものの感触。とくにこの企画は、これまで会場が劇場やスタジオではなく、多くの場合、ダンスとは直接関係ない日常的な場所を用いるのに特徴があった。日常的な場で日常的なしぐさを、日常の衣服に身を纏ったパフォーマーが行なう。すると、その仕草に導かれて見る者のさまざまな記憶が刺激され、目の前の動作のみならず、個人的な記憶まで引き出されて、多層的で豊かな場が生まれるのだ。小さい動きだからこそ滲み出てくる感情があるのだ。今回でいえば、岡だ智代が横向きにだらりと座り、小さく、首を傾けたり、腕を揺らして見せたときの、なんとも言えない、微妙な色気のごときものはどうだろう。特筆すべき妙技とか美しいフォルムとかではないのに、見る者を釘付けにしてしまうのだった。岡だの肉体が堆積してきた経験とでもいうべきなにかを目撃してしまった気がする。今作は、タイトルが「お葬式」。黒服で現われるかと思いきや、4人は白っぽいふわっとした衣裳。彼女たちは送られる側のようだ。『葬送行進曲』を超スローに奏でるピアノが最初から最後まで随伴する。ウエディングドレスのなかに潜って、首を出さずにドレスを踊らせたおださちこなど、印象的な瞬間はいくつもあったけれど、彼女たちのデリカシーを最大限に引き出すためには、やはりスタジオではなく日常の空間(もちろん葬儀場が最良だろう)で見たかった。

2013/03/24(日)(木村覚)

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