2020年02月01日号
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artscapeレビュー

アーティスト・ファイル2013──現代の作家たち

2013年04月01日号

会期:2013/01/23~2013/04/01

国立新美術館[東京都]

注目したのは、チョン・ヨンドゥ。子どもが描いた空想的な絵と、それらを再現して撮影された写真とをあわせて見せる《ワンダーランド》、そして韓国の公園で個人的なエピソードを語る老人たちの映像と、その話に関連するセットを組み立てる映像とを、左右のスクリーンで同時に見せる《手作りの記憶》を発表した。
双方の作品に通底しているのは、イメージそのものを視覚化することの難しさである。老人たちが口にする物語は言語表現であるから目に見えるわけではない。けれども、その話がおもしろいからなのか、あるいはその語り口が淀みなく心地よいからなのか、当人の姿を目にしながらも、いつのまにか自分の脳内でその物語のイメージをつくり上げていることに気づく。だから、片側のスクリーンで映画の撮影現場のようにセットを組み立てる映像が視界に入ってくると、自分で再生したイメージとの齟齬に苦しむことを余儀なくされる。イメージの視覚化が補完されるのであればまだしも、それを阻害されることのストレスは、思いのほか大きい。
《ワンダーランド》にしても、子どもの絵そのものを鑑賞していたほうがイメージは豊かに膨らむにもかかわらず、それらをわざわざ演劇的に再現することの意味は甚だ乏しいと言わざるをえない。平たく言えば、アートという名の「大きなお世話」にしか思えないのである。
チョン・ヨンドゥが暗示したのは、ヴイジュアル・アートの限界なのだろうか。しかし、志賀理江子の《螺旋海岸》が明示したように、ヴィジュアル・アートによるイメージの共有可能性は、まだまだ発展する余地が残されている。それを押し広げる鍵は、チョン・ヨンドゥが逆説的に示したように、言語的な想像力にあるのではないか。

2013/02/22(金)(福住廉)

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