2020年04月01日号
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artscapeレビュー

大駱駝艦・壺中天公演・村松卓矢『忘れろ、思い出せ』

2013年04月01日号

会期:2013/03/15~2013/03/24

大駱駝艦スタジオ 壺中天[東京都]

大駱駝艦壺中天公演の新作は村松卓矢の振付・主演。偏愛的にぼくは村松のダンス・舞台に魅了され続けているのだけれど、その理由のひとつはシンプルなワン・アイディアの徹底にある、そうあらためて感じた。今回、村松が用意したのはロープ。白いロープが上から吊されたところに現われた3人のダンサーたち。何をするのかと思えば、首に巻きつけ、体を傾けた。「おおっ、大丈夫なのか!」と不安になるくらい、顔がきつそう。中国の雑伎団が柔軟な若い女性に軽やかな舞をロープに絡まりながら見せるなんてのとは対極の、三途の川がおぼろげに見えそうになっていそうな、死と生を強く感じさせるパフォーマンス。村松は「縛り」をダンサーにかけて、物理的に動きづらくさせることをかつてもよくしてきたが、これは究極ともいえる(そして比喩ではない本当の)縛りだ。村松が現われると今度は、村松1人に3本のロープが絡まる。さっきまで苦しんでいた3人がロープを引っ張ると村松の腕や脚がマリオネット人形のごとく吊り上げられる。情けないような恥ずかしいようなポーズにさせられる村松に苦笑を禁じえない。こうして、「ロープに縛られるダンサー」のヴァリエーションが舞台上で次々と展開していくのだ。ダンサーはこの縛りに表現の自由を奪われるわけだが、表現の意味を受け取る必要がない分、観客は目の前の身体が被っている出来事に集中できる。それはじつにエロティックな体験だ。的確なアイディアをくぐり抜けた身体が滲ませるエロティシズム。それは壺中天公演の大きな、そして希有な魅力だろう。後半に至り、ロープはマス目状に舞台を覆うと、村松はそこここのマス目から首を出したり軽く絡まったりするが、前半までの強い絡まりがないぶん、しまらない。「苦しませてくれないロープがいじわる」だなんて思ってしまう。所在なげな村松が可笑しい。ロープと身体の関係の持つ幅が見えてくるのも面白い。こうした豊かさも、ワン・アイディアに徹するがゆえに引き出されたことだ。

2013/03/19(火)(木村覚)

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