artscapeレビュー

モローとルオー──聖なるものの継承と変容

2013年10月15日号

会期:2013/09/07~2013/12/10

汐留ミュージアム[東京都]

モローとルオー、名前の響きは似ているけれど、19世紀の耽美な象徴主義者と20世紀の激しい表現主義者とでは、少なくとも絵画上のつながりはまったく感じられない。だから彼らが師弟関係にあると聞いたとき、きっとモローは反面教師だったに違いない(ルオーが反抗学生でもいい)と信じたものだが、事実はまったく逆で、この展覧会でも明らかにされてるようにふたりは深い師弟愛で結ばれていたという。モローが晩年パリのエコール・デ・ボザールで教えていたとき、一番の愛弟子がルオーだった。師弟の信頼は厚く、ルオーは師の没後に開館したモロー美術館の初代館長を30年近く務めてもいる。モロー自身は宗教画や神話画にこだわり続けていたが、新しい絵画動向にも理解があったようで、晩年の「エボシュ」と呼ばれるエスキースはほとんど抽象表現主義といっていいくらいだ。同展ではモローのフトコロの深さばかりに目が行き、ルオー作品はそのための参考作品に甘んじていると感じるのは私のひいき目か。

2013/09/06(金)(村田真)

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