artscapeレビュー
イリ・キリアン「East Shadow」
2013年10月15日号
会期:2013/09/14~2013/09/16
愛知芸術劇場 小ホール[愛知県]
イリ・キリアンの「EAST SHADOW」を観劇した。寄せては引く波のように、絶えず繰り返される向井山朋子のピアノのリフレイン。舞台の右半分は超高解像度の映像で記憶を追想するような男女の動きのシーン、左半分は右と同じ室内が実物として存在し、実際のパフォーマーの抑制された動きがある。そして感情の波の高まりで出現する津波の映像。静謐でパワフル。コミカルな部分もありながら悲しい。実体と映像が交錯しつつ、とりわけ影のふるまいが美しい。普遍的でありながら、東日本大震災を想起させ、あいちトリエンナーレのテーマにも即している。恐るべき完成度で、世界初演の新作が発表された。
2013/09/15(日)(五十嵐太郎)