artscapeレビュー
酒井佑「Horizont」/城田清弘「slide2」(仙台写真月間2013)
2013年10月15日号
会期:2013/09/03~2013/09/08
SARP(仙台アーティストランプレイス)[宮城県]
毎年8月~9月に仙台のSARPを舞台に開催されている「仙台写真月間」。今年は小岩瞳子、稙田優子、酒井佑、城田清弘、伊東卓、花輪奈穂、小岩勉、阿部明子、山田有香の9名が参加した。たまたま仕事で仙台に行っていたので、そのなかの酒井と城田の展示を見ることができた。
酒井佑の「Horizont」は、広々とした海岸の風景を6×6判(マミヤC220)で撮影し、モノクロームプリントに引き伸ばしたシリーズである。画面のほぼ中央に水平線を置き、サーファーや松の木などがシルエットとして浮かび上がる端正な作品だが、これらが東日本大震災で津波の被害を受けた仙台市若林区、宮城野区などの沿岸地域で撮影された写真であることを知ると見方が変わってくる。瓦礫を焼却するために建造された処理場や、海に取り残されたままの自動車のタイヤやボディなど、震災の傷跡も写っているのだが、長時間露光の効果もあって、どちらかと言えば風景作品としての完成度の高さが目につく。それでも、酒井があえて震災後の風景を「このように見たかった(見せたかった)」という思いが、しっかりと伝わってきた。
城田清弘の「slide2」も震災の余波から形をとっていったシリーズだ。一見何の変哲もない、6×7判のフォーマットで撮影されたモノクロームの都市写真だが、実はこれらは仙台市内の活断層に沿って撮影されているのだ。仙台市中央部の北から南にかけては、「大年寺山断層」と「長町─利府線」という二つの活断層が走っている。城田は、道路や河原や住宅の敷地に活断層によって段差が生じている状況にカメラを向ける。正確に、淡々と撮影しているだけに、逆にもし直下型の地震が来たらと考えるとかなり怖い。都市の表層の眺めにこだわりつつ、「見えない」構造をあぶり出そうとするいい仕事だが、より情報量の多いカラー写真を使うという選択もあったのではないだろうか。
残念ながら、他の写真家たちの展示を見ることはできなかったのだが、相当に質の高い「写真月間」に成長しつつあることが充分に伺えた。
2013/09/08(日)(飯沢耕太郎)