artscapeレビュー
竹岡雄二 台座から空間へ
2016年08月15日号
会期:2016/07/09~2016/09/04
埼玉県立近代美術館[埼玉県]
大阪の国立国際美術館からの巡回。ぼくが竹岡さんに興味をもったのは、1992年のドクメンタⅨに出品された野外彫刻を見てから。2001年には国立国際で開かれた「主題としての美術館」展に出していたが、そのとき今回の個展が発案されたというから、実に15年越しの実現になる。彼のテーマは一貫して「台座」。かつて彫刻は抽象形態の台座の上に鎮座していたが、20世紀に入ってブランクーシあたりから台座がなくなっていく。ちょうど絵画が抽象化するにつれ額縁が徐々になくなっていったように、彫刻自体が抽象的になったため必要とされなくなったのだ。裏返せば、彫刻と台座が一体化した、あるいは台座が彫刻化したからともいえるのではないか。竹岡はその台座=彫刻を見せる。会場には平らな円柱や角柱、立方体の台座だけでなく、4畳半ほどもありそうなガラスケースや、マガジンラックのような棚、雑誌の詰まった陳列台、額縁のような壁掛けの展示ケースも並ぶ。また、壁の表層をはがしてコンクリートをむき出しにし、上から透明なケースを被せたインスタレーションもある。いずれもそれがもともと「本体」ではなく、なにかを載せたり入れたりする台または容器であり、それを竹岡は「本体」としているのだ。会場を一巡してなにか物足りなさを感じるとしたら、それは形態も色彩もミニマルだからというだけでなく、「本体」の不在感ゆえかもしれない。
2016/07/09(土)(村田真)