artscapeレビュー

クロダミサト「美しく嫉妬する」

2016年08月15日号

会期:2016/07/22~2016/08/07

神保町画廊[東京都]

2009年に写真新世紀展でグランプリを受賞したクロダミサトは、2010年から撮影しはじめた新シリーズを、11年に写真集『沙和子』(リブロアルテ)として刊行した。京都造形芸術大学時代からの友人をモデルに、あえて男性向けのヌード雑誌風のポーズをつけたこのシリーズは、大きな反響を呼ぶ。それから6年余り、写真家もモデルも30歳になって、あらためて「女が女を撮る」ことの意味を再確認するために撮り下ろされたのが、今回の「美しく嫉妬する」である。
実家のある三重県と東京で撮影された新作は、『沙和子』とはかなり肌合いが違う。若さが弾けるような勢いは薄れ、無理なポーズをつけることもなくなった。「そこにいる」モデルを自然体で受け入れ、どちらかといえば記念写真のようにそっけなく撮影している。どうやら表現よりも記録(ドキュメント)という要素が強まってきているようだ。つまり、彼女たちにとって、ヌードを撮り─撮られるという関係の持ち方は、むしろ日常的なものになりつつあるということだが、これは諸刃の剣になりかねない。ヌードであることの非日常性が失われていくことによって、以前の緊張感や高揚感が弛んでいってしまうからだ。そのあたりのバランスをうまくとりながら、ぜひこの先も長く撮り続けていってほしいと思う。
なお、日本カメラ社から同名の写真集(展示とは1点を除いて別カット)が刊行されている。こちらは「女同士の二人旅」の途中で撮影されたという雰囲気がより強まっている。

2016/07/22(金)(飯沢耕太郎)

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