artscapeレビュー
有元伸也「TOKYO CIRCULATION」
2016年08月15日号
会期:2016/07/03~2016/08/03
ZEN FOTO GALLERY[東京都]
有元伸也が2006年から撮り続けている、新宿を中心とする6×6判の路上スナップのシリーズも今年で10年目を迎えた。2010年からは、自ら運営するTOTEM POLE PHOTO GALLERYで「ariphoto」と題する連続展を開催し、その度に写真集『ariphoto selection』(vol.1~vol.6)を出してきたのだが、今回のZEN FOTO GALLERYでの個展を契機として、それらをまとめた大判ハードカバー写真集『TOKYO CIRCULATION』(ZEN FOTO GALLERY)が刊行された。
印刷、造本に隅々まで気を配った写真集は素晴らしい出来栄えだが、62点の作品をピックアップした展示もなかなかよかった。普段TOTEM POLE PHOTO GALLERYで見慣れた写真群が、六本木のギャラリーの空間では、また違った雰囲気で見えてくる。一点一点の作品の個別性だけでなく、それらの相互のつながりが浮かび上がってくるのだ。特に途中からレンズを広角系に変えたことで、写真の奥行き感が違ってきているのが興味深い。路上の群衆から「浮いてくる」ような人物を画面の中心に据えてシャッターを切っていることに変わりはないのだが、その人物のアクションが周囲の環境に及ぼす影響が、写真に写り込んできているのだ。しかもそれらの写真群は、5枚×5枚、3枚×8枚という具合にグリッド状に並んでいた。そのことで、新宿の路上を一繋がりの大きな空間として捉える視点が、より強調されているようにも感じた。
有元のこのシリーズは、もはやライフワーク的な意味合いを持ち始めている。だが、ひとつのスタイルに固執するのではなく、これから先も大胆に変化していってほしい。そろそろ、カラーバージョンも考えられるのではないだろうか。
2016/07/13(水)(飯沢耕太郎)