artscapeレビュー

アート・アクアリウム展

2011年03月01日号

会期:2011/01/29~2011/02/14

大丸ミュージアムKOBE[兵庫県]

暗闇のなか、さまざまなガラス水槽に入った金魚が、鮮やかな色彩でライトアップされて浮かび上がる。アクアリスト・木村英智氏は、ガラス水槽だけでなく色と光の演出によって、アクアリウムを人間の住環境へ拡張するアート空間へと仕立て上げた。それは、見慣れた水族館の展示とはかけ離れた、過剰に人工的な空間である。水族館での展示は、生態展示や行動展示といったかたちで、生物を自然に近い状態で見せる。つまり、海・川の水中環境を再現した空間演出がなされる。しかし「アート・アクアリウム展」では、和をモチーフに、花魁をイメージした巨大な金魚鉢・模様の浮き出た行燈・額縁・花瓶など多様な形をしたカラフルな水槽の中で、金魚が群れ泳ぐ。それというのも、金魚が天然には存在しない、愛玩用に作りだされた生物であるという「人工性」が基本コンセプトになっているからだろう。同展では、金魚はもはや生き物というよりも、和物の生活道具に見立てられた水槽とともにある、インテリア・デザインの一部なのだ。会場にいると、昔懐かしい風情漂う金魚鉢が恋しくもなったが、最後の展示《ビョウブリウム(屏風水槽)》には眼が吸い寄せられた。屏風型の水槽に投影された水墨画のような映像が時間と共に変化し、赤と黒の金魚が点景となって浮遊する。ここには、複合現実の空間、時間と運動を導入したアート作品が出来上がっていた。[竹内有子]

2011/02/12(土)(SYNK)

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