artscapeレビュー
2012年03月01日号のレビュー/プレビュー
プレビュー:陶芸の魅力×アートのドキドキ
会期:2012/03/03~2012/07/06
滋賀県立陶芸の森 陶芸館[滋賀県]
画家や彫刻家など、陶芸の専門家ではないアーティストがつくり出した陶芸作品を通して、陶芸とアートの関係や現代陶芸の一断面を紹介する。ミロ、ピカソ、岡本太郎、横尾忠則、舟越桂、日比野克彦、奈良美智など、陶芸に挑戦したアーティストの作品と、ピーター・ヴォーコス、金子潤、グレイソン・ペリー、八木一夫、鯉江良二ら陶芸とアートの狭間を行く作家たちの作品の2部構成となる。
2012/02/20(月)(小吹隆文)
蒐めて愉しむ鼻煙壺──沖正一郎コレクション
会期:2012/01/02~2012/03/25
大倉集古館[東京都]
鼻煙壺(びえんこ)とは、嗅ぎ煙草入れのこと。英語ではsnuff bottleといい、もともとはヨーロッパで用いられていた器が中国で独自の発達を遂げたものである。用としては乾燥した煙草の粉末を入れる器であるから、素材には余り制約がない。硝子製を中心に、木、象牙、貴石、金属、七宝などさまざまな素材と工芸技術が用いられている。器には小さな蓋が付き、蓋の裏には粉末を取り出すための小さな匙が付いている。取り出した嗅ぎ煙草の粉末は鼻の粘膜にこすりつけて、ニコチンを摂取する。鼻煙壺は日本の印籠や根付けと同様、本来は実用的な器であったものが非実用的な装飾品へと変容し、それとともに工芸品としての粋を極めていった。小さな透明なガラスの器に、内側から風景や人物を描いた現代の鼻煙壺を中国のお土産品として見たことがある人も多いのではないだろうか。
本展に出品されている約300点の鼻煙壺は、ファミリーマート元社長の沖正一郎氏の蒐集品である。沖氏は『日経流通新聞』の記事で月給の1割までを趣味に費やすと語っているが(1986年10月13日、25頁)、20数年のうちに3,000点以上の鼻煙壺を蒐集し、すでに一部を北京・故宮博物院やロンドン・ヴィクトリア&アルバート博物館に寄贈。さらに2008年には大阪市立東洋陶磁美術館に1,200点を寄贈している。蒐集家の鑑のような人物である。今回の展覧会に出品されているのは、沖氏があえて手元に残した逸品やその後蒐集した品々なのだそうだ。超絶的な技法が施された品々に、息を呑まされる。[新川徳彦]
2012/02/21(火)(SYNK)
プレビュー:FUKAIPRODUCE羽衣『耳のトンネル』、大駱駝艦(演出:高桑晶子)『おやま』ほか
『耳のトンネル』というタイトルで、FUKAIPRODUCE羽衣の上演がこまばアゴラ劇場(2012年3月9日~19日)で行なわれます。自分たちの舞台をミュージカルならぬ「妙ージカル」と称する彼らは、猛烈に身体をたぎらせ燃やして、アングラのようなファンタジーのような不思議な世界を歌い踊り演じる。失笑しながらいつのまにか飲み込まれてしまう独特の舞台。これが、今月の推薦公演です。今月はほかにも大駱駝艦(演出:高桑晶子)壺中天公演『おやま』(2012年3月15日~20日)がありますし、イデビアン・クルーなどで活躍するダンサー中村達哉と私的解剖実験で知られる手塚夏子がコースリーダーになって新人作家たちが創作・発表するSTスポットの企画「ヨコラボ」も気になります(ヨコラボ'11b民俗芸能調査クラブ『春の実験まつり──本当にひとごとなのか?』=2012年3月3日~4日@STスポット、ヨコラボ'11A集団創作コース 最終発表『のりしろ』=2012年3月6日~7日@象の鼻テラス)。「ヨコラボ」は「ラボ20」と呼ばれ、2000年代数々の新しい才能を引き出した伝説的企画がもとになっています。その意味でも、二人が見出し、育てたニューフェイスに期待したいところです。
2012/02/29(水)(木村覚)