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2014年09月01日号のレビュー/プレビュー

プレビュー:日本パフォーマンス/アート研究所「Tokyo Experimental Performance Archive」

Super Deluxe[東京都]

本レビューでも先月紹介した大友良英/contact Gonzoの回(7月18日)室伏鴻/伊東篤宏の回(8月30日)は終了していますが、このイベントを紹介したいと思います。会場に多数のカメラを用意してパフォーマンスを記録し、ハイ・クオリティな状態でアーカイヴ化するこのイベントが意図しているのは「継承と創造のサイクル」の確立。ダンスやパフォーマンス的表現など舞台上演を基本とする表現活動では、音楽におけるCD(あるいは音源)、映画におけるDVDなどのプロダクトが乏しい分、過去の表現にアクセスすることが難しいところがあります。ゆえに、舞台表現が過去への参照・批評をともなっている割合は他の表現に比べ少なく、仮に表現が個性的であるとしてもコンテクストが形成されにくいということがあります。その点で「アーカイヴ」は喫緊の課題なのです。昨今、ダンスの創造環境のなかで「アーカイヴ」という言葉は一種の流行語になっています。この言葉に向けた思いは多様でしょうが、とくに日本パフォーマンス/アート研究所の取り組む「創造」へと向かっていく意味での「アーカイヴ」は、未来の作家たちに大きな刺激となることでしょう。ただし課題も山積しています。どのように撮影・編集すると「継承」の活動としてふさわしい映像になるのか?あるいは、アーカイヴ化された映像群を次のクリエイションの刺激剤にするにはどんな仕掛けが必要なのか?など。こうした課題にどんな知恵が注がれるのか? キャッチーでも派手でもないけれども、こうした取り組みこそいまダンスやパフォーマンス的表現のなかでもっともホットで先端的なイシューなのではないでしょうか。残るパフォーマンスは山崎広太/恩田晃の回(9月23日)。9月15日にはカンファレンスがあり、ぼくもBONUSが目指すことについて説明する予定です。


otomo yoshihide Tokyo Experimental Performance



contact Gonzo Tokyo Experimental Performance

2014/08/30(土)(木村覚)

ミュシャ・スタイル

会期:2014/07/12~2014/11/09

堺市立文化館 アルフォンス・ミュシャ館[大阪府]

パリのアール・ヌーボーの代名詞ともなった「ミュシャ・スタイル」であるが、アルフォンス・ミュシャがポスター画家としてそのスタイルを生み出し活躍したのは、サラ・ベルナールのポスター《ジスモンダ》(1894)から最初に渡米する1904年頃までのわずか10年間のことにすぎない。ミュシャがどのようにしてそのスタイルを生み出したのかはいまだに謎であるが、それ以降多くの追随者、模倣者を生み、いまだにその人気は衰えることがない。ではミュシャ・スタイルとはなんなのか。スタイルの構成要素には裾の長い布をまとった神秘的な女性や、植物、淡い色彩、曲線、装飾文様の多用があげられる。一見するとそれは様式化されたパターンの繰り返しに見えるが、実際には一つひとつの作品で異なる様相が見られ、ミュシャが作品のテーマごとに入念にモチーフを選択していたことが解説されている。また、ミュシャ・スタイルの前後の時代に描かれた作品と比較することで、表現の特徴と差異を提示している。[新川徳彦]

2014/8/20(水)(SYNK)

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