artscapeレビュー
2016年03月15日号のレビュー/プレビュー
第8回恵比寿映像祭「動いている庭」
会期:2016/02/11~2016/02/20
ザ・ガーデンホール、ザ・ガーデンルーム、恵比寿ガーデンシネマ、日仏会館、STUDIO38、恵比寿ガーデンプレイスセンター広場ほか[東京都]
第8回恵比寿映像祭「動いている庭」へ。ロバート・スミッソンのマンハッタンを周遊する浮庭とアスファルトを傾斜に流す作品は、個人的に好みである。銅金裕司のアリジゴク砂絵は、その小さな箱庭感が日本ぽい。中谷芙二子の霧とクワクボリョウタの影の作品は、もはや鉄板である。一方、ビデオアース東京は、アートの名のもとに弱者=橋の下のホームレス男性を突撃取材する映像であり、昔の作品だが、微妙だと思う。
2016/02/17(水)(五十嵐太郎)
教文館創業130年記念企画 アントニン・レーモンド展
会期:2016/01/22~2016/03/10
教文館ビル9階ウェンライトホール[東京都]
銀座の教文館ビル9階のレーモンド展へ。通常、建築展をやらない場所なので、意外に、と言っては失礼だが、図面や模型も揃い、かなり充実した内容だった。ビル自体も彼が80年前に設計したものだが、改めて展示を見ると、結構レーモンドの作品はまだ現存しているものが少なくない。やはり教会の仕事が多いからかもしれないが、愛されているのだろう。
2016/02/17(水)(五十嵐太郎)
シャルル・フレジェ「YÔKAINOSHÏMA」/「BRETONNES」
会期:2016/02/19~2016/05/15
銀座メゾンエルメスフォーラム/MEM[東京都]
シャルル・フレジェは1975年、フランス・ブールジュ生まれの写真家。特定の民族衣装、ユニフォームなどを着用した社会的集団の構成員を撮影するポートレイトのシリーズで知られている。ヨーロッパの辺境地域の伝統的な儀礼の装束を撮影した「WILDER MANN」のシリーズは、2013年に青幻舎から写真集として刊行されて話題を集めた。それと同じアプローチで、北海道を除く日本各地の祭礼や民間儀礼を撮影したのが、今回銀座メゾンエルメスフォーラムで展示された「YÔKAINOSHÏMA」のシリーズである。
この種の民俗写真の撮影は、日本の写真家たちによっても試みられているが、フレジェの軽やかなカメラワークと弾むような色彩感覚によって、新たな視覚的表現が生まれてきているように感じる。特に日本の神々や鬼たちと、ヨーロッパの「WILDER MANN」の写真を並置した「Winter(冬)」のセクションは、インスタレーションにも工夫が凝らされ、大地に根ざした生命力をヴィヴィッドに感じさせる展示で見応えがあった。
一方、東京・恵比寿のMEMでは、ほぼ同時期に、彼のもう一つの新作である「BRETONNES」シリーズがお披露目されていた。こちらは、フランス・ブルターニュ地方の民俗衣装を身につけた女性たちを、特徴的な白いレースの頭飾り(コワフ)に着目して撮影している。背景をグレートーンでぼかして、被写体となる女性を浮かび上がらせる手法を用いることで、古典的な肖像画を思わせる画面に仕上がっていた。衣装を通じて、それぞれの地域の歴史的な記憶や文化的な背景を浮かび上がらせるフレジェの手法は、さまざまな可能性を孕んでいると思う。比較文化論な視点をもっと強調すれば、よりスケールの大きな作品世界に育っていくのではないだろうか。
「Y KAINOSH MA」2016年2月19日(金)~5月15日(火)銀座メゾンエルメスフォーラム
「BRETONNES」2月10日(水)~3月13日(日)MEM
2016/02/18(木)(飯沢耕太郎)
試写『バンクシー・ダズ・ニューヨーク』
2013年10月、ストリートアーティストのバンクシーがニューヨークの路上で毎日1点ずつ作品を公開した。その“狂乱”の1カ月を追ったドキュメンタリー。狂乱というのはこの映画を見る限り大げさではない。作品の場所は明かさず公式サイトに投稿するだけなので、人々はそれを頼りにニューヨーク中を探しまわるしかない。その作品はグラフィティあり、スフィンクスの彫刻あり、家畜のぬいぐるみを乗せたトラックあり(肉屋の前で停まる)、売り絵の露天商あり(バンクシー自身の絵がたった60ドルで売られているが、だれも気づかない)、ショーウィンドウの絵に加筆したものありと予想がつかない。しかもそれを見に行ったり写真に撮ったりするだけでなく、消すヤツ、復元するヤツ、上書きするヤツ、盗むヤツ、転売するヤツ、ボール紙で隠して金を取って見せるヤツ、金を払って見るヤツ……と反応も千差万別、もうお祭り騒ぎなのだ。でもそれもバンクシーにとっては想定内。人々が右往左往する狂乱ぶりもバンクシーのストリートアートの一部なのだ。
2016/02/18(木)(村田真)
大森靖子ワンマンライブ「HELLO WORLD! MYNO. IS ZERO」
会期:2016/02/18
赤坂BLITZ[東京都]
考えてみると、彼女が歌うのを生で見るのは三度目である。おそろしく研ぎ澄まされた前衛でもなく、マーケティングの戦略的なキャラ造形でもない。超雑食的なアヴァンギャルドとでもいうのだろうか。現代のつぶやきを電波的に受信する強烈な歌詞が響く。そしてアンコール後のひとりの弾き語りがやはり一番すごかった。
2016/02/18(木)(五十嵐太郎)