artscapeレビュー

2009年02月15日号のレビュー/プレビュー

20世紀のはじまり──ピカソとクレーの生きた時代

会期:1/2~3/22

Bunkamuraザ・ミュージアム[東京都]

たまたま渋谷に用事があり、たまたま時間があき、たまたま招待状を持っていたので見に行く。このような条件が重ならなければ見に行かなかったかもしれない。そもそもぼくはこの展覧会をピカソとクレーの2人展だと早とちりしていた。つまりこのふたりの巨匠の交流とか影響関係(あるのか?)を探る展覧会だと思い込んでいたのだ。ところが入ってみたら、いきなりマティスに始まり、フォーヴィスムやドイツ表現主義が続き、ようやくピカソが現われたかと思ったらシュルレアリスムに移り、最後はクレーで終わる構成なのだ。作品はすべてノルトライン・ヴェストファーレン州立美術館(通称K20)からの出品で、しかも計64点のうちピカソ6点、クレー27点だから、ふたり合わせてようやく半分といったところ。でもまあぼく的には、ピカソとクレーよりベックマンやエルンストを見られてよかったっす。

2009/01/11(日)(村田真)

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竹中工務店《MOA美術館》

[静岡県]

竣工:1981年

熱海にある美術館。特にアプローチの空間が面白い。かなり険しい斜面の丘の上に美術館はある。入口は丘の下。長いエレベーターを乗り継ぎ、いったん円形ロビーで折れ曲がり、広場を越え、建物の下をくぐり、入口に到達する。上までのぼって振り返ると海が見える。エントランスは2階で、展示ルートをたどると1階に下りてくる。実際には車で行ったため丘の上の3階から入ってしまったが、ロケーションがこれほどよい建築も珍しい。内部では、秀吉の黄金の茶室も見ることが出来る。

2009/01/12(月)(松田達)

TARO賞の作家I

会期:2008/10/11~2009/1/12

川崎市岡本太郎美術館[東京都]

今井紀彰から電話があって、彼が出品している「TARO賞の作家I」展を観に行くことにした。会場の岡本太郎美術館は、川崎市の生田緑地のとても気持ちのいい場所にあるのだが、やや遠くて、足を運ぶには一日潰す覚悟がいる。この展示も行かなければと思っていたのに、ついずるずると最終日になってしまっていたのだ。
結果は行って得をした気分になった。今井は以前から写真を大画面に曼荼羅状に配置していくコラージュ作品を制作していたのだが、今回はそれがさらに進化して「ビデオコラージュ」になっていたのだ。ハイビジョン化によって画像の精度が増し、写真作品並みの細部のクォリティが実現できた。画面の分割、融合、合成などの視覚効果も簡単に使えるようになってきたのだという。とはいえデータの量は半端ではなく、10分程度の作品で、書き込みだけで40時間もかかる。デジタル機器の進化によって、逆に今井のような画像の物質性を追求する映像作家が出現してきたのはとても興味深いことだ。
内容的には、これまでの彼の「曼荼羅」作品と同様に、ブレークダンス、街の雑踏、水の輪廻、空と雲などの森羅万象が、点滅しつつ変幻していく魔術的な映像世界が構築されていた。もともと彼の中にあったシャーマン的な体質が、静止画像から動画になることで、より強化されているようにも感じる。今後の展開が大いに期待できそうだ。
「TARO賞の作家I」展の他の出品者は、えぐちりか、開発好明、風間サチコ、棚田康司、横井山泰。TARO賞も11回目を迎え、ユニークな作家が育ってきている。えぐちの増殖する卵の群れ、下着でできた食虫植物など、日常を異化する作品が面白かった。この中の何人かには、岡本太郎の作品世界のスケールの大きさまで肉迫していってもらいたいものだ。

2009/01/12(月)(飯沢耕太郎)

和田守弘 展──走り去った美術家の航跡1967-2006

会期:1/13~25

神奈川県民ホールギャラリー[神奈川県]

一昨年の1月に急逝した和田さんの回顧展。ぼくは個人的には70年代末から80年代初頭にかけての数年間、多少のおつきあいがあっただけで、それ以前も以後もほとんど知らなかった。だから90年代末から再開した絵画を見たのも初めてだった。ぼくにとって和田さんといえばビデオ作家、またはビデオインスタレーション作家なので、こんな絵を描いていたのかと、ちょっと驚いた。いったいどこへ行くつもりだったんだろう。

2009/01/13(火)(村田真)

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むこうのさくら最終回──佐倉交流

会期:1/15

佐倉市立佐倉小学校[千葉県]

千葉県佐倉市と北海道河東郡士幌町佐倉地区という同じ地名の2カ所をアートで結ぶ、北海道在住アーティスト磯崎道佳発案の交流プロジェクト。昨年夏からそれぞれの佐倉小学校で交互に行なってきたが、最終回の今日は、一辺7メートルの巨大な風船サイコロに地元の草花のシルエットを貼った「はなサイコロ」を転がして遊ぼうというもの。最後は穴を開けて大はしゃぎ。子どもたちにとっては「交流」なんてお題目より、いま、この瞬間を楽しめばいいのかも。
関連情報:http://www.dnp.co.jp/artscape/exhibition/review/081215_03.html#t02

2009/01/15(木)(村田真)

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