artscapeレビュー

2009年02月15日号のレビュー/プレビュー

高橋良「森─forest─」

会期:1/3~1/18

neutron[京都府]

和紙のような凸凹した生成りのハンガリー製の紙をつなげた大画面。人物や骸骨、動物、夢で見た光景など、さまざまなイメージが描き込まれた作品は「森」なのだそう。紙の独特の質感や、墨、膠、胡粉などの画材の風合いが、幻想的で叙情的な雰囲気をいっそう豊かにしているが、なにより作家の画力に説得力がある。高橋の死生観が織り込まれた「森」の風景は、生々しくもあり、全体的には暗い印象なので一見気が重くなりそうな気もするのだが、じっくりと細部を見ていくと、その混沌世界はすっと気持ちに染み込んできて心地悪いものではない。むしろ、画面のあちこちに視線が吸い寄せられて、目が離せなくなってくるから不思議だ。

2009/01/16(金)(酒井千穂)

池田学 展

会期:11/26~1/17

MIZUMA ART GALLERY[東京都]

正面の壁に大作がどーんと1点。これはすごい。190×340センチの大画面をミリ単位の細密画で埋めつくしている。北斎の大波が世界を丸ごと飲み込んだがごとき構図。これ1枚あれば1年は見飽きない。そう考えればお買得かも。いくらか知らないけど。

2009/01/16(金)(村田真)

山本竜基「私 心 景」

会期:11/26~1/17

MIZUMA ART GALLERY[東京都]

母親の女学生時代の写真に自分の写真を組み合わせて描いた《おかんと共に》、男の背中を毛穴まで克明に描出した《無題(背中)》など、自称スーパープライベート主義絵画。キショイなあ。

2009/01/16(金)(村田真)

横谷宣「黙想録」

会期:2009/1/7~2/28

gallery bauhaus[東京都]

おそらく横谷宣という名前をほとんどの方は知らないだろう。僕も昨年9月まではまったく知らなかった。作家・翻訳者の田中真知さんに紹介され、彼の手作りアルバムを見せられた時、これはただ者ではないと感じた。そこに写っているのは彼が旅の途中で出会った風景だが、すべて褐色のソフトフォーカスの印画に焼き付けられている。最初に見た印象は、これはピクトリアリズム(絵画主義)の再来ではないかということだった。ピクトリアリズムは、19世紀末から20世紀初頭にかけて世界的に流行したスタイルで、ゴム印画法やブロムオイル法のような特殊な技法を使って「絵のような」画面を作り上げる。聞けば横谷もカメラやレンズを自製し、尿素を使った独特のトーニング(調色)をプリントに施しているのだと言う。
だが写真を見ているうちに、これは別にオールド・ファッションをめざしているのではなく、むしろ彼にとってのリアルな眺めをできうるかぎり正確に定着しようという強い意志のあらわれなのではないかと思いはじめた。そのことは今回のgallery bauhausの個展ではっきりと確認できたように思う。横谷の写真に写っているのは、彼が一番美しいと思っている黄昏時の光そのものを、どうしたらきちんと捉えることができるかという苦闘の結果である。そのためにカメラやレンズも改造し、求める光に出会うために、最小限の装備を身につけて砂漠を超えて何日も旅行する。今時こんな古風な求道者的な写真家がいること自体が驚きなのだが、もっと驚くべきことは、じわじわと口コミで彼の写真の魅力が伝わり、多くの観客がギャラリーを訪れ、作品を購入していることだ。そのピュアーな、だが不思議な抱擁力を備えた作品世界は、多くの人たちを巻き込みつつあるようだ。

2009/01/16(金)(飯沢耕太郎)

菅野由美子 展

会期:1/13~31

ギャルリー東京ユマニテ[東京都]

壺や皿をひとつ、または数個ずつ原寸大で丹念に描いている。いや「描いている」というより「写している」というべきか。質感や立体感はあるのに、なぜか実在感が希薄なのだ。

2009/01/17(土)(村田真)

2009年02月15日号の
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