2021年12月01日号
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artscapeレビュー

2010年07月01日号のレビュー/プレビュー

プレビュー:Trouble in Paradise/生存のエシックス

会期:2010/07/09~2010/08/22

京都国立近代美術館[京都府]

京都市立芸術大学創立130周年記念事業に協賛して開催される企画展。生命、医療、環境、宇宙における芸術的アプローチをテーマに、12の先鋭的なプロジェクトが紹介される。プロジェクトのうち、松井紫朗らがJAXAと共に取り組んできた「宇宙庭」は既に某展覧会で見たことがあるが、他のプロジェクトは想像がつかず、見慣れた美術展とはまったく異なる状況になる可能性が高い。学際的な挑戦により21世紀の新たなアート像が垣間見られることを期待している。

画像:《未来の家政学・Tea House of Robots》
rootoftwo + PLY Architecture (University of Michigan)

2010/06/20(日)(小吹隆文)

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プレビュー:北城貴子 展──Circulation of the light

会期:2010/07/10~2010/08/07

ギャラリーノマル[大阪府]

森の木立や水辺の情景などを移ろいゆく光の情景として捉えた北城貴子の作品。デビュー時には抽象度が高かった画風は徐々に具象へとシフトしているが、ギャラリーノマルでは約3年ぶりとなる今回の個展では光との一体感を強調した新たな画風が見られそう。写真のソラリゼーションを思わせる白く飛んだ部分が印象的な新作に注目してほしい。

2010/06/20(日)(小吹隆文)

プレビュー:森村泰昌モリエンナーレ/まねぶ美術史

会期:2010/07/17~2010/09/05

高松市美術館[香川県]

20世紀の人物をテーマにした個展「なにものかへのレクイエム」が全国を巡回中の森村泰昌が、「瀬戸内国際芸術祭」で盛り上がっている(はずの)香川・高松で新たな個展を開催する。彼がデビューする以前に描いた秘蔵作品を紹介するもので、タイトルの一節「まねぶ」からもうかがえる通り、美術史上の巨匠を真似た作品が開陳されるのだ。作品は、高校生の頃に描いたカンディンスキー風の作品や、70年代のデューラー風、岡本太郎風の作品などレアものが中心。いわば一美術家の等身大の美術史であり、大々的に開催される国際美術展に対するささやかな抵抗と見ることもできるだろう。また、高松市美が所蔵する田中敦子作《電気服》にオマージュをささげた新作が披露されるのも見どころだ。

画像:《電気と熱を描く人(田中敦子と金山明のために)》2010年

2010/06/20(日)(小吹隆文)

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手塚夏子『私的解剖実験-5~関わりの捏造~』

会期:2010/06/21~2010/06/28

こまばアゴラ劇場[東京都]

舞台上をひとがたの怪物が4体うろついている、そんな、とてつもなく変則的な上演を目撃してしまった。怪物の外面的な模倣ではない、むしろ意識のコントロールから身体を離したりずらしたりしたことで生まれたと想像される、無意識の身体、故にリアルにおかしな状態の身体が、小さな舞台空間をうごめいていた。
前半は、篠原健、小口美緒、若林里枝の若い3人が、最初は立った状態で自分の身体に起きている微細な出来事を逐一口にし(胃袋が、肛門が、右腕が……)、次は向かい合わせに座って会話をはじめた。立っていたときにも時折起きていた痙攣的な首の微動などの動きが、会話のなかで次第に甚だしくなり、また強いテンションを帯びるようになってくる(ギョロ目になる者もいれば、反対にぐっと内側にテンションを溜め込んで硬直する者もいる)。
そうこうするうちに手塚夏子が現われると、立ちあがった3人に囲まれるようになった。まるで3人の身体が発する電波をすべて受信しようとしているかのよう。低く太鼓の鳴る音がして、トランス的な祭儀かと錯覚させられる。このときの手塚もやはり身体の状態を実況している。語る我(意識)と語られる我(身体)、その主従関係は日常のそれと反転しており、語りは身体の暴走にすっかり支配されてしまわずに、どうにか意識の覚醒した状態を保つための唯一の手段になっているように見える。
後半、4人は椅子に座り向かい合うとそれまでのテンションを落ち着かせるようにあくびを繰り返す。そのあいだ、圧倒的にひきつけられたのは「ゲー、ゲー」とえずいているようなげっぷしているような背の低いほうの女の声。かわいらしいルックスとは明らかに不似合いのおかしな音が止まらない。不安を感じる。この不安に観客は「別の可能性」(パンフレットでの手塚の言葉)を予感すればよいのだろうか。4人は次第に立ちあがると、磁石のように互いにひきつけられたり引き離されたりして、前代未聞の、不思議な動きの怪物と化した。それは、神を必要としない祭儀、身体が身体に身体を奉る祭儀のように思われた。

2010/06/28(火)(木村覚)

プレビュー:吾妻橋ダンスクロッシング

会期:2010/07/16~2010/07/18

アサヒ・アートスクエア[東京都]

今月推薦する公演は吾妻橋ダンスクロッシング。桜井圭介のライフワークともいうべきこのイベントは、いつの間にか「ダンス」の概念が極端に拡張され、とうとう遠藤一郎の出演という事態にまで至っています。こんなこと、一年前にいったい誰が予想できたでしょうか?! クロスジャンルのアーティストたちがパフォーマンスする「吾妻橋」的企画はここ2、3年で急速に増えましたし、観客の受容の仕方もジャンルレスに「面白ければジャンルはとくに関係なし」といった様子で益々どん欲になっていると感じる昨今です。この大きなストリームに身を委ねる最良の機会に間違いありません。お祭り的な要素も濃い企画ですが、ここは一発芸的な力業ではなく、小さくてもきらりと光るアイデアをアーティストたちには競ってもらいたいものです。はたして、チェルフィッチュの後に見る遠藤一郎、Off-Nibrollの後に見る宇治野宗輝はどんなふうに見る者に映るのか! 想像するだけでわくわくします(実際の順番はいまのところ定かではありません)。ちなみに、7/10には、本イベントがプロデュースしているSNACにて「2人が見ている未来の美術」というトークイベントが開催されます。木村が聞き手となり、高橋瑞木さん(水戸芸術館学芸員)と伊藤悠さん(island代表)という2人の学芸員/ギャラリストをお招きして、日本の美術の現状と未来の美術の行方などについてお2人が「見ている」ところをお聞きする予定です。2人の共通項はもちろん遠藤一郎。だからこのイベントは、今回の吾妻橋ダンスクロッシングの予習を兼ねた関連企画でもあります。こちらもふるってご来場ください。

2010/06/30(水)(木村覚)

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