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artscapeレビュー

江戸に長崎がやってきた! 長崎版画と異国の面影

2017年04月15日号

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会期:2017/02/25~2017/03/26

板橋区立美術館[東京都]

江戸中期から100年以上もの間に長崎で版行され、主に同地を訪れた人々の土産物として親しまれた版画──長崎版画(長崎絵)を紹介する展覧会。長らく中国やオランダとの貿易の窓口であった長崎の版画には、中国人やオランダ人の風俗、オランダ船をモチーフにしたものが多く見られる一方で、名所風景が描かれることが少なかったのは、これらの版画に求められていたのが江戸時代の人々にとってのエキゾチシズムだったからであろう。オランダ人の食事風景を描いた作品が人気だったというのも、江戸の人々の好奇心を物語っていて面白い。また、本場で学んだことを権威づけるためであろうか、江戸の蘭学者や蘭医がこれらの版画を購入して持ち帰ることもあったという。江戸の浮世絵と比べると比較的素朴で色数が限られているものが多いが、それがまた浮世絵版画にはない魅力だ。日本人は出島には自由に出入りできなかったので、じつは長崎在住の者であってもオランダ人を実見できる機会は限られていた。そのため他の絵師による肉筆画や版画をコピーしたり、想像で描いたりすることも頻繁に行なわれていた。それでも、江戸でペリー来航を描いた版画などに比べれば、オランダ人の姿は写実的に描かれているように思う。今回の展示でとくに興味深かったのは、長崎版画の再発見を取り上げたコーナーだ。開国とともに廃れていった「長崎版画(あるいは長崎絵)」が脚光を浴びたのは明治末期。明治40年代から昭和初期にかけて、南蛮、紅毛趣味が流行し、長崎版画の蒐集や研究が進んだ。長崎絵、長崎版画という名称で呼ばれるようになったのもこの頃だ。長崎版画に傾倒した人物のひとりが版画家の川上澄生で、なるほど本展に出品されている版画には川上澄生の作品を彷彿とさせるものがいくつもある。[新川徳彦]

2017/03/26(日)(SYNK)

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