2017年06月15日号
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artscapeレビュー

椎原治 展

2017年04月15日号

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会期:2017/03/04~2017/03/26

MEM[東京都]

椎原治(1905-1974)の1930~40年代の仕事に、再び注目が集まりつつある。2016年にはモスクワのマルチメディア美術館やパリ・フォトで作品が展示され、ドイツではONLY PHOTOGRAPHYシリーズの一冊として『OSAMU SHIIHARA』が出版された。今回のMEMでの展示は、ずっと兵庫県立近代美術館に寄託されたままになっていた300点余のプリントから、息子のアーティスト、椎原保がセレクトした31点によるものである。
椎原は、大阪の丹平写真倶楽部に入会して写真作品を本格的に制作・発表するようになる前は、画家として活動していた。東京美術学校で藤島武二に師事した(1932年卒業)という経歴はかなり特異なものだ。そのためか、同じ丹平写真倶楽部に属する安井仲治、上田備山、平井輝七、河野徹らのシュルレアリスムの影響を取り入れた「前衛写真」が、どこか付け焼き刃的な印象なのに対し、椎原の作品は絵画と写真の両方の領域を無理なく、自在に行き来しているように見える。彼が得意にしていた、ガラス板に直接油彩絵を描いて、印画紙に焼き付けた「フォト・パンチュール」(写真絵)の手法など、まさに画家としての素養が活かされたものといえる。
それに加えて、今回の展示で特に気になったのは、女性ポートレートやヌードに対する、彼のやや過剰なまでの執着である。残念なことに、1940年代になると戦時体制がより強化され、そのような写真は撮影も発表もむずかしくなってくる。短い期間ではあったが、その濃密で耽美的なエロスの追求は特筆に値するだろう。今回のセレクションには、街のスナップや風景など、これまであまり取り上げられなかったテーマの作品も含まれている。あらためて、椎原治という写真家の全体像を概観できる、より大きな規模の展覧会の開催が必要であると感じた。

2017/03/15(水)(飯沢耕太郎)

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