artscapeレビュー

ヨコハマトリエンナーレ2011

2011年09月15日号

会期:2011/08/06~2011/11/06

横浜美術館、日本郵船海岸通倉庫(BankART Studio NYK)ほか[神奈川県]

「世界はどこまで知ることができるか?」をキャッチフレーズに、いよいよ「ヨコトリ」が開幕した。11月初めまで、いろいろな企画が逐次開催されることになるが、まずはオープニング当初の様子を報告しておくことにしよう。といっても、絵画やインスタレーション作品については、他の方が触れると思うので、ここでは写真作品を中心に書いてみたい。
横浜美術館では田口和奈、荒木経惟、杉本博司、ミルチャ・カントルらの作品を見ることができた。ルーマニア出身のカントルは、映像やインスタレーション作品も発表しているが、日常に潜む陥穽を細やかな手つきであぶり出していた。他は国内では発表済みの旧作の展示が中心なので、あまり新味はない。日本郵船海岸通倉庫では野口里佳が新作の「人と鳥」のシリーズを出していた。例によって人と鳥の姿を大きなスケールの風景の中に小さく配置して、象徴的な映像世界を構築している。
全体に、絵画と彫像のようにたたずむ女性がゆっくりと回転する映像作品を並べたミヒャエル・ボレマンス(「ウエイト」)や、手のクローズアップのスローモーション映像を流し続けるツァイ・チャウエイ(「洗礼」)のように、映像作品と写真作品との間の境界線が、さらに消失しつつあるように感じた。やはり映像と写真のインスタレーションだが、タイのアピチャッポン・ウィーラセタクンの日常と神話の空間を接続させる試みがなかなかよかった。
新港ピアの倉庫群を改装した「新・港村」でも、いくつかの写真展企画がかたちをとろうとしていた。「八戸レビュウ88」は「八戸市民と3人の写真家、梅佳代、浅田政志、津藤秀雄によるコラボレーション・プロジェクト」。8カ月にわたって、延べ400人以上の市民がポートレートの被写体となり、それぞれの想いを綴った。八戸での展覧会の会期中に東日本大震災が起こったことで、写真の意味があらためて問われることになる。その展示を再構成して「横浜版」の展覧会としてよみがえらせた。他にエグチマサル、藤本涼、横田大輔、吉田和生による「Expanded Retina」展、BankART School飯沢ゼミ有志による「いまゆら」展などが開催中だが、まだ会場設営が進行中なので、これから本格的にスタートというところだろうか。

2011/08/07(日)(飯沢耕太郎)

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