2024年02月15日号
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artscapeレビュー

イケムラレイコ「うつりゆくもの」

2011年09月15日号

会期:2011/08/23~2011/10/23

東京国立近代美術館[東京都]

70年代初めから40年近くヨーロッパを拠点に活動してきたイケムラレイコの回顧展。展示は通常の回顧展とは逆に、まず新作・近作に始まり、徐々に時間をさかのぼっていき、最後に再び新作が見られるという構成だ。時代順に並べると、初期の作品を見ているうちに疲れてしまい、最後のほうは素通り同然になりかねない。若いころに傑作をものして名を成し、その遺産で晩年まで食いつないでいくような早熟型の物故作家の回顧展ならそれでもいいが、近年ますます特異な世界に突き進んでいる旬のアーティストであるイケムラの場合、やはり新作を真っ先に見せたいという同展の意図は正解だろう。事実、最後のほう(つまり初期)の80年代の作品は、当時ヨーロッパを吹き荒れていた新表現主義絵画となんら変わるところがないし、その手前の90年前後の作品は、山水画の構図や日本的な中間色を多用した和洋折衷様式で、(悪名高い)岡田謙三の「ユーゲニズム」を思い出させる。これらを最初に見せられたら、イケムラのイメージはまるで違ってしまうところだった。彼女が独自の世界を確立していくのは、その後(展覧会ではその手前の)90年代にテラコッタによる彫刻が登場し、黒い背景に横たわる少女のモチーフが現われ、キャンヴァスだけでなく目の粗いジュートに描くようになってから。最新作、つまり展覧会の最初のほうには再び「山水」のシリーズが登場するが、これはかつてのような和洋折衷とかユーゲニズムとはまったく違う世界になっている。これらを先に見られたことは幸いだった。

2011/08/22(月)(村田真)

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