artscapeレビュー

『コクリコ坂から』

2011年09月15日号

会期:2011/07/16

全国東宝系[全国]

なんでこの作品を映画化したのか、疑問に思っていたが、漫画版とかなり違うことに驚かされる。いや、だからこそ映画として成立したと言えるだろう。建築がもうひとつの登場人物になっていたが、その描写も正確だ。ただし、木島安史がリノベーションした孤風院を想起させる建物「カルチエラタン」は、『千と千尋の神隠し』における湯屋のような存在に変容している。原作にはまったくない、学生による明治建築の保存運動が面白い。とはいえ、過去をノスタルジーで美化する『always』の嫌らしさもない。映画に描かれるカルチエの雰囲気は、かつて二年間を過ごした東大駒場寮に残っていた。懐かしい。

2011/08/14(日)(五十嵐太郎)

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