artscapeレビュー
第60回日本美術教育学会学術研究大会京都大会 記念講演「鷲田清一:アートの教育/教育のアート」
2011年09月15日号
会期:2011/08/21
同志社大学室町キャンパス寒梅館ハーディーホール[京都府]
同志社大学で開催された日本美術教育学会で、大阪大学総長で哲学者の鷲田清一さんの記念講演があった。これまでに関わりのあったアーティストたちとのエピソードや、よく知るアーティストが3.11東日本大震災の後に起こした行動など、自身の経験や身近な人々を例に、「アートの現場で起こっていること」が紹介され、そして学校教育におけるアートの展望や可能性について語られた。なにか行動を起こすとき、なにをするのか、そのためになにをすべきか、われわれの社会ではそのようなことを考えるのが常だが、ときにアーティストたちはまるで「初期設定」を書き換えるように、人々がそれまでに理解してきたコンテクストとは違う可能性を指し示し、さまざまなものを〈原っぱ〉化していく、という話。また、それはとことん自らの感覚を追求する人であるからこそなしえることであり、教育の場でも良い影響を与える存在となりうるという話。話の説得力は言うまでもないが、希望感も与えられた講演だった。聞き終えてからも高揚した気分が続いた。
2011/08/21(日)(酒井千穂)