artscapeレビュー

黄金町バザール2011

2011年09月15日号

会期:2011/08/06~2011/11/06

日ノ出町・黄金町界隈[神奈川県]

これも新・港村と同じくヨコトリ特別連携プログラム。京急日ノ出町駅から黄金町駅にかけての高架下周辺に密集するアヤシゲな店を改装し、アーティストのスタジオに再活用していく長期的プロジェクトで、3年前に始まった。広大なスペースの新・港村とは反対にこちらは街一帯に狭小なスペースが点在しているため、一軒一軒たずね歩く楽しみはあるものの、真夏は暑い。9月からは参加アーティストや作品が増えていくらしいが、この段階での注目は、竜宮美術旅館の志村信裕と樋口貴彦、八番館の北川貴好と雨宮庸介の作品。志村は旅館の風呂に湯を張って上からレース模様の映像を投影し、天井に揺らめく像を反射させるインスタレーションを発表。夜には実際に入浴できるという。元ラブホの風呂という淫靡な場所を最大限に生かした体験型の秀作だ。樋口は旅館の裏の空き地に古い山小屋を移築し、壁の中央に水平にガラスブロックを差し挟んだ作品を制作。ビルに囲まれた空き地に突如異空間を出現させるという力業だ。北川は黄金町界隈で拾い集めた百の電球を球状にした作品。アヤシゲな街だけにアヤシゲな色の電球も混じっていて、夜点灯するのが楽しみ。雨宮は狭い部屋の壁に斜めから映像を当てたものだが、その不定形の映像の輪郭に合わせて壁にキャンヴァスを置いている。これは絵画やイメージが前提としている正面性や四角形に揺さぶりをかけているようにもみえる。樋口を除いて一つひとつの作品規模は小さいだけに、かなり実験的な作品を試みることができたようだ。

2011/08/09(火)(村田真)

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