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生誕100年記念「フェリックス・ホフマン展──うつくしい絵本の贈りもの」

2011年09月15日号

会期:2011/07/16~2011/08/28

伊丹市立美術館[兵庫県]

スイスの絵本作家、フェリックス・ホフマンの生誕100年を記念して開催された展覧会。絵本や原画、ステンドグラスの下絵や壁画の仕事などさまざまな仕事が紹介されていたが、特に印象的だったのが彼がまだ若いときに幼い我が子に宛てて書いたいくつかの手紙だった。身近な動物や人々などのスケッチとその場面の状況が詳細に記された手紙はみずみずしい描写で、いちいちその光景が目に浮かぶよう。会場の一番最初のコーナーに展示されていたそれらは、彼の絵本制作やその後の数々の活動の支軸をなすものであることも明示していた。大胆な構図で描かれた挿絵がリズミカルに展開して物語をよりドラマチックに盛り上げていた《ラプンツェル》や《ねむりひめ》など、自然の描写が美しい絵本ももともとは娘のために描かれたもの。父親のまなざしという点がその絵の魅力に大きく関わっていることを知った展覧会。内容もボリュームも充実感があった。

2011/08/07(日)(酒井千穂)

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