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夏休み企画展「sweet memory──おとぎ話の王子でも」

2011年09月15日号

会期:2011/07/20~2011/09/11

京都芸術センター[京都府]

甘いもの・お菓子をテーマに、謝琳、河地貢士、林智子、瓜生祐子ら4名の作家が紹介された。教会や聖堂などの建物を思わせる真っ白な砂糖の塔が立ち並ぶ謝琳のインスタレーション、果物の盛り合わせやスイーツを自然の風景に見立て繊細な線と色彩で表現した瓜生のタブロー、市販の駄菓子を素材にした河地の小さなカービング、そして、参加者を募り、小さな瓶に採取したそれぞれの涙(本物)をまるでアクセサリーのように砂糖菓子の“こはく”に閉じ込め、美しく作品化した林智子のプロジェクト。林のこの作品には参加者各々の思い出のエピソードやメッセージが書かれたカードも一緒に展示されていた。甘さという味覚から引き出されるさまざまな記憶、ものごとの関係にアプローチする今展、日常的な視点から表現を展開する作家たちの作品には、全体的に甘さという儚い幸福感が漂っており美しいものが多かったが、謝琳と林の作品にはさらに快感というその強力なイメージから連想が広がる要素があり、それもまた興味深く思った。

2011/08/13(土)(酒井千穂)

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