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柳宗悦展──暮らしへの眼差し

2012年02月01日号

会期:2012/01/07~2012/02/29

大阪歴史博物館[大阪府]

独自な審美眼による新しい美の概念と工芸理論を展開した思想家・柳宗悦(1889-1961)は、文芸雑誌『白樺』の創刊に参加し、東京帝国大学哲学科を卒業する頃には、朝鮮陶磁器の堅実で素朴な美に傾倒される。また、無名の職人がつくる民衆の日常品の美しさを見出し、その民衆的工芸の美を称揚する「民芸」という言葉と考えを世に送り出した。1936年には日本民藝館を開設する。本展は、柳宗悦の没後50年と日本民藝館開館75周年を記念するもので、柳が蒐集した陶磁器や工芸品、絵画、関連資料など、370点余を紹介している。出展品のほとんどは日本民藝館の所蔵品で、これほど大量の所蔵品を一度に貸し出しするのは初めてだという。充実でわかりやすい展示となっている。さらに、会場には柳宗悦邸(現日本民藝館の西館)の応接室が再現されている。この応接室の調度品は柳自身が選んだもので、独自な美意識とこだわりが伺えて興味深い。展示の最後には、柳の長男で、長いあいだ日本民藝館の館長を務めた、プロダクトデザイナー・柳宗理(1915-2011)の仕事が紹介されており、親子二代にわたる、手と眼と暮らしへの思いを垣間見ることができる。[金相美]

2012/01/06(金)(SYNK)

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