2020年08月01日号
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artscapeレビュー

イワサキタクジ展(ファントムと使途不明な日々)

2012年02月01日号

会期:2012/01/06~2012/01/14

GALLERY MAKI[東京都]

希代の画家、イワサキタクジの新作展。展示した絵画をベースに、フィルム写真をスライド上映する「幻燈会」を随時おこなった。写真はこれまでと同様、この世を写しながらもあの世への入り口を垣間見させるような寂寥感があふれており、その視点はいつにも増して此岸と彼岸のあいだを彷徨う霊魂のそれを彷彿させた。入れ代わり立ち代わり映し出される写真を見ていると、そこに写されている風景の向こう側に連れて行かれるように錯覚するほどだ。そうした強い霊性は、写真だけでなく絵画にも通じるイワサキの大きな特徴だが、今回発表された絵画にはひときわ強く立ち現われていた。中世の宗教画をモチーフにした色彩豊かな絵画に描き出されているのは、生と死、父と母、男と女、神と悪魔、赦しと恐怖などの両義性。いずれかが明示されている場合もあるし、いずれにも解釈できる場合もある。生きることも死ぬことも、すべてを丸ごと引き受ける覚悟のようなものが、画面からひしひしと伝わってくる。これほど幅と厚みのある絵画は、少なくてもここ数年の展覧会では見られなかったから、今回の個展でイワサキはひじょうに大きな達成を遂げたと言わねばなるまい。さらなる展開が待望される、数少ない画家である。

2012/01/13(金)(福住廉)

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